死と無の間
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じわり、と血が滲み出した。

皮膚を突き破り溢れる血液は服から漏れ布地に広がりやがて身体を伝い地に落ちる。

傷口を抑えても止めきれず指の間から赤い液体が零れ落ちる。

傷とは別に額から流れるは汗。頬を流れ首筋を伝い血と交わる。

そんな彼の前で、顔を青褪めさせながら立ち竦む少年が一人。

少年は震える声で、その人の名を呼んだ。


「り…ぼーん、さん……」


リボーンと呼ばれた、その名を呼んだ彼より少し年下に見える彼は、少年の名を呼ぼうとした。

けれどその呟きは声にならず。

空気を震えさせることしか出来なくて。

膝を付き、手を付き、その身を地面へ倒れさせる。


「リボーンさん!!」


獄寺は身を弾けさせたかのようにリボーンの所へと駆け寄る。地面に赤い染みが広がる。

震える身体で、パニックを起こしかける頭を抑えて、獄寺はシャマルに連絡を取る。

シャマルは最初、獄寺が深手を負ったのかと思ったらしい。それほど獄寺の口調は頼りなかった。


ああ、笑ってしまう。


自分は…リボーンが庇ってくれたおかげで、傷一つないくせに。

自分が未熟だったせいで、リボーンが死にかけているくせに。



リボーンに傷を負わせた凶器にはどうやら毒が塗られていたようで。

リボーンは毎日高熱に苦しみ、苦痛に呻き、衰弱していった。

そして、必死の治療も虚しくリボーンの症状は悪くなっていく。


ああ、嗚呼―――どうしてこんなことに。


こんなことが起きるのは間違っているのに。

呪いに掛けられた身体で、いつどうなってしまうかも分からぬ状態で生きてきて。

それがようやく解けて、これから……何の気兼ねもなく生きていけるはずだったのに。


自分のせいでと獄寺は己を責めた。


何度もリボーンに謝り、気が狂わんばかりに嘆いた。

それをリボーンは何か言いた気な目で見て、しかし何も言えぬまま、何も告げられぬまま、そのまま―――