死と無の間
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「―――リボーンさん!!」


叫んだ先は教室だった。

夕暮れ。放課後。微かに残っていた生徒が何事かと獄寺を見ている。

その生徒の中にはツナも含まれていた。


「ど…どうしたの獄寺くん」

「あ…」


夢を見ていたらしい。それも飛び切り悪い夢を。

流れる汗をそのままに、荒い息を整えることに専念する。


…ああ、嫌な夢を見てしまった。


リボーンが…あのリボーンが死んでしまうのだ。

しかも自分を庇って…自分なんかのせいで。

獄寺は夢であったことに今一度安堵の息を吐く。目の前には心配して来てくれたらしいツナの姿。


「うなされてたけど…大丈夫?」

「…ええ、大丈夫です」


力なく笑う獄寺。

説明をせねば。嫌な夢を笑い話に変えてしまわねば。

そう思って、獄寺は夢の内容を話す。


「オレがどこかからの刺客に襲われる夢を見まして」

「それは…うなされるかもね」

「ええ、でも攻撃を喰らう直前にリボーンさんが助けてくれまして」

「リボーン…?」

「ええ。だけどリボーンさんは敵の毒を食らってしまい倒れ…解毒出来ぬまま、苦しみぬいて死んでしまうんです」

「………」

「おかしいですよね。いくら呪いが解けたからといって、あのリボーンさんが死ぬなんて…ありえないのに」

「いや、あの、獄寺くん…?」

「はい?」


獄寺は笑ってツナを見上げる。同じように笑ってほしくて。

しかし視界に見えるツナは怪訝顔だ。

おや、と獄寺は思う。どうしたのだろうか。

よもや夢の中とはいえみなの敬愛する恩師リボーンを殺してしまったことを怒っているのだろうか。


「え、ええと、」

「あのさ」


獄寺とツナは同時に声を出した。獄寺はツナに発言を譲る。

ツナは少し躊躇ってから、改めて口を開く。



「リボーンって―――誰?」



―――獄寺は、

自分はまだ夢の中にいるのだと、

そう―――思った。