その者、嵐の守護者の側近につき
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程なくして、部下は獄寺を見つけた。

見つけたのだが……


「そんなわけで、今日は僕と一緒に過ごしなよ」

「いや、何がそんなわけなのか一切分からねえから」


見つけた上司はナンパされていた。

しかもその相手はあの雲の守護者だった。あの超怖い人相手に動じないとか流石は我が上司と部下は頷いた。


しかしそれはそれとして…いかがしたものか。


今あの二人の前に出ようものなら間違いなくあの雲に睨まれる。自分が睨まれることで獄寺に変な因縁を付けられるかも知れない。

獄寺は変にお人好しで義理堅い。多少強引な言い分であってもどう考えてもこじつけであっても部下の失態は自分の失態と受け取り雲雀の要求を聞き入れるかも知れない。


自分がしゃしゃり出たせいで。

それだけは避けなければならない。


しかし…ならば、どうするか。


雲雀の部下は山本の部下と違い上司至上主義なので応援は望めない。

他の部下も…雲雀が相手だとあまり動きたがらない。雲雀恭弥はそれだけ恐れられていた。

だが、それでも部下は引くわけにはいかないのだ。親愛なる上司のために。

何も前に出て、身体を張ってもらうだけしか手段がないわけじゃない。

部下は携帯電話を操作した。

一分後。


「極限ーーー!!」


馬鹿が来た。呼ばせたのは自分ではあるのだが。

馬鹿は部下を通り過ぎ獄寺と雲雀の間に割って入る。


「コラ雲雀!嫌がるタコヘッドの貞操を無理矢理奪おうとは何事だ!恥を知れ!!」

「キミだって彼を無理やり誘ってるじゃない。自分はいいわけ?」

「馬鹿者!オレはちゃんと許可取っとるわ!何故か最後には殴り合いになってるがな!!」


そもそも誘わないで頂きたい。朝っぱらから。業務中に。

ともあれ、二人の注意は獄寺から逸れた。

今の内に獄寺を…と思う部下であったが、それより前に誰かが走り抜けるのが早い。

見れば、それは守護者の紅一点であるクロームで。


「獄寺くん、こっち」

「お?おう」


クロームは獄寺の手を引き何処かへと走り去った。


(クローム殿超足速いですな!!)


部下は急いでクロームのあとを追った。

ああ、でもクロームがいるということは…

部下と同じく獄寺を追おうとする雲と晴の前に霧が立ちこむ。霧は人の形を作り男が現れる。

もう一人の霧の守護者…六道骸。


「クフフ…クロームと隼人くんの甘いひと時を邪魔させるわけにはいきません!」


この言い分。霧はよもやまさか獄寺のために我が身を犠牲にしようというのだろうか。部下は少し感激した。


「さっさと諦めて下さい。そして僕に隼人くんたちを追い掛けさせて下さい。そして僕はクロームと交代!隼人くんといちゃいちゃします!!」


あ、やっぱこいつも他のと同類か。


真面目に仕事しろ貴様ら。というか朝っぱらから仲間割れしてこのファミリー大丈夫か。

ともあれ部下は後退る。この守護者の面々はふざけているがその実馬鹿みたいに強い。正面から向かい合って勝てるわけがない。そもそもどうして味方同士で争わなければならないのか。

守護者たちは離脱しようとする部下には目もくれない。彼らにとって部下は雑魚なのだ。

部下としてもこんなところで無駄な時間を過ごすつもりはない。部下は別ルートから獄寺と合流することにした。