その者、嵐の守護者の側近につき
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そして部下が次に獄寺を見つけた時には何があったのかクロームの姿はもう既になく。
代わりに…
「獄寺氏!コーヒー買ってきました!!」
なんかランボがパシられていた。
…いや、正確には自らパシっている。ランボは自主的に獄寺のパシリとして日々を過ごしている。それでいいのか15歳。
獄寺はといえばランボからコーヒーを受け取り煙草を取り出す。
「は…!獄寺氏!火です!!」
すかさずランボがライターを取り出し獄寺の煙草に火を点ける。
「ん?おお、わりぃ」
「い、いえ!僕にとって獄寺氏のお役に立てることが生きがいですから!!」
だからそれでいいのか15歳。というか雷の守護者。あんた一応幹部の一人だろ。
ともあれチャンスだ。ランボしかいないのであれば邪魔はされないだろう。
「獄寺殿」
「ん?ああ、お前か。どうした?」
やっと会話が出来た。
部下は感動した。朝から駆け回り守護者たちを避けて通ってやっとここまで来れた。一体何の罰ゲームだ。
「は!こちらの件について確認したいことが」
どれどれと獄寺が部下に近付く。ランボが何か言いたげな目でこちらを見ているが気にしない。
「ああ、ここは―――」
指示を出す獄寺の、その後ろから現れた影に部下はぎくりと身体を強ばらせた。
「獄寺くん」
その声が響くと同時、獄寺の目が見開かれ振り向いた。
「10代目!」
獄寺が飼い主を見つけた子犬のように10代目に近付く。
「何用ですか?」
「そろそろお昼だから、一緒に食事でもと思ってね」
もう昼だったのか。獄寺を探し一言告げるだけで午前は終わってしまった。なんて時間の無駄。
「ええ、喜んで」
獄寺は憧れの先輩に誘われた女学生のように胸をときめかせていた。
どうか食われませんように。
部下はそう祈りながら一歩身を引く。一応の目的は果たしたし流石にここのボスに楯突くことは出来ない。
…明らかに獄寺の身に危険が及ぶようなことがあれば、話は別ではあるが。
でもまあ今は昼間だし大丈夫だろうと判断し部下は主務室に戻った。
そしてその数時間後。
部下は再び獄寺を探していた。
…あのあと。
獄寺は食事を終えたあと主務室まで戻って仕事を開始した。
獄寺は有能な人物で、仕事の仕上げも早い。
それはそれでいい。構わない。大歓迎だ。
だが…本来ならば10代目のするべき仕事までするのはいかがなものか。
さりげなく進言してみれば「10代目の仕事を手伝うのも右腕の役目」と返された。
いや、これは手伝うどころではない気が。仕事分取りじゃないですか。
とも言えば「お前だってオレの仕事分取ってるだろ」と言われる。
平行線になりかけたが獄寺は話を打ち切り仕事に向かった。部下も諦めた。
そして獄寺は先程親愛なる10代目の仕事を終わらせ届けに行った。
届けるぐらい自分がと部下は志願したが、獄寺は頑なに首を横に振った。部下は嫌な予感しかしなかった。
そして、獄寺は帰ってこなかった。
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