その者、嵐の守護者の側近につき
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ここと10代目の所をもう五往復は出来そうな程の時間が経っているのに関わらずだ。
そんなわけで、部下は再び獄寺を探していた。
恐らくは、10代目の主務室までの道のりにいると思うのだが。
そしてその予想の通りに、獄寺はその道筋にいて。
そして部下の予想通りに、獄寺はまたナンパされていた。
あと、ストーカーがまた日課をしていた。
面倒になった部下はストーカーをナンパ師にけしかけた。
その後も、まあまあそれはそれはもうもう獄寺は声を掛けられ、時には(味方に)拉致られそうになったり。あとストーカーがまた日課をしていたり。
その度部下は携帯電話を操作し人を操り危機を凌ぐ。
そんな騒ぎも落ち着いた頃には陽も落ちていて、部下はため息を吐いた。
…ボンゴレ守護者の部下は、二つの派閥に分かれている。
己の守護者の恋を応援する派と、とにかく獄寺を守る派である。
獄寺の部下はもちろん獄寺を守る派である。むしろ仕事の大半は獄寺を守ることである。別名獄寺親衛隊である。
他の守護者の部下の内誰が守る派なのか、それとも己の守護者派なのか常に情報交換がされている。
誰がスパイなのか、心変わりしたか、そしてそれぞれの守護者、及び獄寺を付け狙う輩の所在。それらを見極め一つに纏める。
更にはしょっちゅう10代目(あと時々他の守護者)の仕事を持ってくる獄寺の本来の仕事のフォローも受け持つ。
なまじ有能な獄寺は無理をしてでも全ての仕事をこなそうとするので部下たちは多少強引にでも獄寺の仕事を奪う必要があるのだ。
もう少ししっかりしてもらいたいと思う反面、この上司を自分が守って差し上げなければとも感じる。
うむうむと頷く部下の隣では獄寺が怪訝な顔をしていた。
「…どうした? お前」
「は!なんでもありません獄寺殿!」
…獄寺親衛隊には一つだけ守るべき規則がある。
己の思いを伝えてはならぬ。
それをしては、部下たちが追い払っている守護者たちとなんら変わらないからだ。
しかしこの規則は中々に厳しい。今まで何人もの有志が「オレは獄寺さんにそんな感情は抱かない。オレは純粋に獄寺さんを守りたいんだ!!」と言っては散っていった。
そんなことを思い出してる部下の横、獄寺がその思考を察知したかのように、
「それにしてもお前はよく持つな。オレの側近の中じゃ今までで一番長い」
「光栄です」
「他の奴らはみんな山本んとこ行っちまった。やっぱオレよりあいつの方がとっつきやすんだろうな」
「そのようなことは決してありません」
規則を破ったものは罰として山本の部下入隊である。ストーカーの妨害任務である。この辺の事情を10代目は知っているのか結構融通を利かせてくれる。
曲がり角が見える。部下は一歩前に踏み出し、獄寺に振り返る。
「では、自分はこれで。本日はお疲れ様でした獄寺殿。また明日」
言って、帰ろうとする部下の背に獄寺の声がぶつかる。
「待て」
「は。なんでしょう」
立ち止まって振り向けば、獄寺は隣に来ており。
「最近物騒って聞くから、送ってやる」
「は…?い、いえ!結構です!!」
むしろ自分が獄寺を送っていきたいほどである部下。帰り道に獄寺が襲われたらと思うと夜も眠れない。
しかし獄寺は部下の意見など聞きもしない。さっさと歩きだす。
「獄寺殿!ですから自分は……!!」
「いいからいいから、折角オレが送ってやるって言ってるんだ。言うこと聞いとけ」
獄寺は首だけ動かし振り向いて。
「流石のオレも夜道を女ひとり歩かせるほど鬼じゃねーさ」
「な………っ!!」
部下は顔を赤くさせ、口をパクパクと動かす。
マフィアなのだから夜道ぐらい平気だとも、女だからって弱くありませんとも言葉が思いつかず、結果黙り込み代わりに獄寺を睨みつける。
しかし獄寺は既に前を向き進んでいる。部下の視線もどこ吹く風。
「待って下さい、獄寺殿!」
部下は獄寺を追いかけながら、ああ、歴代側近はこうして落ちていったのだろうなと変に納得していた。
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じ、自分はまだ落ちません。落ちませんとも!……まだ。
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