その選択が、全ての過ち
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「ていうか僕ヘタレじゃないよ!?えーと、ほら!!骸くんだって倒したし!!!」

「あれは白蘭様の実力って言うより、周りの幻覚遮断装置の働きの方が大きかったですよ」


「えー!?」


「ったく…お前さっきからなんなんだよ。緊迫した雰囲気ぶち壊しだ。邪魔

「全くですね。白蘭様、邪魔です

「せ…正ちゃん!?」


二人から一様に冷たい視線を受けて白蘭はたじろいた。


「…はぁ、何のためにこの僕が10年も前からこつこつ地味地味彼とのフラグを立ててたと思ってるんですか。本気で邪魔ですよ白蘭さん

フ、フラグ!?なに!?何を言ってるの正ちゃん!?ていうか目が怖いよどうしちゃったの正ちゃん!!」

「砂糖の塊のように甘い洋菓子の名称もはっきりと言えない方は黙ってて頂きたく」


「正ちゃーん!!!」


今更ながらのような攻撃の矛先に冷や汗だらだらな白蘭。

確かに、未だ正しく言えない。


「…洋菓子の名称…?」


獄寺が怪訝ながらも視線を白蘭に向けてきた。それだけで白蘭はちょっとどきどきしてしまった。

ここで正しくあれの名前が言えれば、獄寺の株も上がるんじゃないのか?そんな声が白蘭の脳内から聞こえてくる。幻聴だ。


「い、言えるさ…!言えるもん!!」

「じゃあ言ってみて下さいよ」

「ま、まし、ましゅ、まし………」


意気込んではみたものの、ああ、彼はやっぱり言えない。どうにもこうにも舌が回らなくていつも通りにすら言えない。


「ま、ます、まし、ましめろ!…じゃなくて、えと…ましゅ、まし………ぅ、ぅぅうあああん!良いもん言えなくても良いんだもん!!マシマロとも言うんだもんあれは!!

「はいはい」

「正ちゃんお願い!そんな冷めた目で見ないで!!辛いから!僕かなり辛いから!!

「…なんだお前…マシュマロも言えないのか…?」

「う………、うん」


やや涙目ながらに項垂れる白蘭。その姿には哀愁すら漂っていた。

何の事情も知らない人間が見たならば、彼が一つのマフィアの総大将だとは誰一人として思わないだろう。それぐらい彼には覇気がなかった。

そしてそんな白蘭に更に追い討ちをかけたのが…拘束されている獄寺隼人。

獄寺は白蘭に見下すような視線を向けると…一言。


「…だっさ」


「う…うわぁぁあああああん!!!」


ああ、なんとも酷で、なんとも無情。舌っ足らずというのはそれほどまでに罪でいけないことなのか。

想い人である獄寺隼人にどうしてこんなにも見下されなければいけないのか!


「ひっく…馬鹿!馬鹿ー!隼人ちゃんの馬鹿ー!!!」

「ああ?なんでてめぇごときにちゃん付けで呼ばれなきゃなんねぇんだ?」

「うるさい!ばかー!!」


「………うるさいのは」

「白蘭様の方です」


「え…?チェルベッロ?」


きーきーと喚く白蘭の肩に手を置いて制したのは…二人のチェルベッロ。


「全くもう」

「さっきから」

「叫んだり泣いたり喚いたり…」

「少しは」

「ボスとしての」

「自覚を」

「持って下さい」


二人のチェルベッロは口々に白蘭に向けて言葉を放つ。感情は相変わらず稀薄で、気味が悪い。


「な…なんだよ!ボスに口出ししてー!僕は一番偉いんだぞ!総大将なんだぞー!!」


少したじろぎながらも、白蘭はそう言い放った。…言い放ってしまった。


「そうですか」


きっぱりとした、チェルベッロの声。


「え?」

「なら、仕方ありませんね」


チェルベッロは一歩。また一歩と白蘭に近付いていく。


「口で言っても分からない仔には…」

「身体で分からせるしかないですね」


「ちょ、ま、あ、だめ…ぎにゃーーー!!!



………数時間後。


「獄寺くん!無事!?」


獄寺救出に若きボンゴレ10代目が目撃したのは…チェルベッロに卍固めを決められている白蘭の姿だった。

教訓。

チェルベッロの言うことは、素直に聞く。


++++++++++

ご、獄寺くん……無事っぽい、ね…?