それは懐かしい、そして初めての時間
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オレの眼前、獄寺が飯を頬張っている。
オレの前にはコーヒー一杯。それを飲んでる間に、獄寺はクロワッサン、サラダ、スープと次々に胃袋の中に収めている。
生きるために、必要不可欠な食事をしている。
美味しいですね、なんて、そんな呑気な感想を零しながら。
「それで―――リボーンさん」
「なんだ」
獄寺が聞いてきたのは、食後の紅茶を飲みながらだった。
オレの言葉は、相変わらず冷たく、素っ気ない。
獄寺はといえば、こちらも変わらず気にした様子を見せず、ビスコッティに手を伸ばしながら続きの言葉を放つ。
「お聞きしたいことがあるのですが」
「言ってみろ」
「もしかしたら、オレが寝惚けているだけで、とんでもなく間抜けなことを言ってしまうかも知れませんが」
「お前が間抜けなのはいつもの事だ」
なんてオレの暴言にも獄寺は「それもそうですね」と納得すらして、オレに問う。
「確かオレって―――死んだんじゃ、ありませんでしたっけ」
それは、その問いは、獄寺本人が言った通りあまりにも間抜け過ぎた。
何を馬鹿なことを言っているんだと、なら今オレの前にいるお前は誰なんだと、そう言ってやりたくなるような質問だった。
だが―――
「ああ、その通りだ」
オレの口から出るのは、肯定の言葉。
「お前は確かに、死んだ身だ」
獄寺は驚くことなく、悲観することもなく、ああやっぱりと納得した顔すら見せた。
「お前は既に、この世の住人じゃない―――獄寺」
事実を突き付けてやれば、獄寺はそうですよねえ、と頷きながらオレを見る。
「…こう言ったら、もしかしたらお怒りになるかも知れませんが…大きくなりましたね、リボーンさん」
「お前は変わらんな」
この世界は獄寺が死んでから既に10年もの月日が流れていた。
その時間分オレは成長し―――
獄寺は10年前の、死んだ頃の、14歳の姿のままだった。
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