それゆけ☆ツナ父
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「思い出したか?」

「いや…なんも思い出せないけど、なんか…なんか………悲しいことがあったような気がする」

「獄寺の手料理を喰ってぶっ倒れたんだ。お前は。以上」


そう、言われた途端ツナはカッと目を見開いた。そして全てを思い出す。


「あああああ!そうだった…思い出した。獄寺くんの作ったヘドロ………もとい、卵焼きを………うっ」


急に胃から込み上げるものが来て咄嗟に口を押さえるツナ。


「一応、胃の中は洗っておいたぞ。暫くは吐き気が続くかもしれないと医者は言ってた」


どんだけだ、とツナは目で突っ込んだ。しかし獄寺の様子についても分かった。どうして泣いていたのかも。


「ううう…獄寺くんごめん…オレは獄寺くんの愛を受け止め切れなかった…オレは駄目だ、情けない男だ…」

「いや、受け止めたからその様なんだろ」

「馬鹿!獄寺くんを悲しませてなにが受け止めただ!ううう獄寺くん………うっ」


ツナは言葉を発したせいでまた込み上げてきた吐き気を今度は抑えることが出来ず、予め用意されていた洗面器に胃液を吐いた。


「10代目…」


リボーンに言われて退室したものの、獄寺に圧し掛かったのは拭いきれない罪悪感だった。

嗚呼、父親であるツナに。10代目に自分はなんということを…!

そんな獄寺に、ため息を吐きながら近付く影一つ。


「お前…少し落ち着け」

「ラル…でもオレ…10代目に…!」

「ええい、泣くな!なんだ、ミスを犯したのなら次から気を付ければいい」

「次…?」

「そうだ次だ。なんならこれから雪辱戦と行くか?」

「せつじょく…?」

「ああ。オレが見ててやる。もう一度…いや、何度でも料理を作れ」

「ラル…分かった。オレ、やってみせるぜ!!」

「その意気だ!!」

「ところでラルは料理出来るのか?」


「オレの職業はなんだ?軍人だ。軍人は料理をするか?しない。つまりそういうことだ」


つまり出来ないというわけだ。


「―――分かった!オレはやるぜ!!」


獄寺はラルの言葉はとりあえず聞かなかったことにして握り拳を作り気合を貯めた。


「落ち着いたか?」

「うう…うん……」


胃の中をほとんど空っぽにしてツナは答えた。


「…いつまで続けるつもりだ」

「何をさ」

「この茶番だ。獄寺が娘?お前が父親?最初聞いたとき一体何の冗談だと思ったぞ」

「リボーンは母親だしね」

「うるせぇ」

「いつまでもさ」

「………」

「これはオレなりのけじめなんだよ、リボーン」

「けじめ…か」

「そう。だから続ける…いつまでも」

「そうか…学校はどうするんだ?休むのか?」

「…行くよ。オレは日常を続けないといけないから…」

「………そうか」

「うん」


ツナはそう言って、のろのろと支度を始める。吐いたせいで気分がいまいち優れないが仕方ない。

登校する前に獄寺の姿を探したが見つからなかった。リボーンが「探してくる」と言ってそこで別れた。ツナは学校へと向かう。

久々の一人での登校。隣には誰もいない。寂しい道。

そこに。


「キミ」


静かに声を掛けられる。

そこにいたのは並中の風紀委員長…雲雀恭弥。


「彼女はどうしたの」

「………」

「どうして黙っているの」

「雲雀さん…セーラーエプロンってどう思いますか」

「最高だね。それが?」

「あとは察してください!」


言ってツナは走り出した。


「察してって…ちょ、キミまさか!!」

「獄寺くんのセーラーエプロンは最高でしたーーーーー!!!」


ツナは高らかに叫んで吐き気も忘れて駆けていく。

その声に反応する周りの方たち。


「あの獄寺隼人が!?」

「あのアイドルが!?」

「オレのエンジェルが!?」


「「「セーラーエプロン!?」」」


そのことについてツナはいく度も質問を投げられることになるがツナは全て走って無視した。ダメツナの影は今どこにもない。

だが無視出来ない人もいた。走った先の曲がり角。そこで誰かにぶつかった。


「あいたっ」

「おー、ボンゴレ坊主か」

「やぁシャマル」

「さっきセーラーエプロンがどうのって聞こえたが」

「ええ、言いました」

「隼人か?」

「獄寺くんです」

「いくらだ?」

「映像はオレの脳内のみです」

「使えねぇ奴」

「うっさい。あと手料理も貰いました」

「………そうか」