それゆけ☆ツナ父
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シャマルはそっとツナに何かを差し出してきた。

受け取ったそれは、胃薬だった。

ツナはシャマルに身近さを感じた。

教室に着き、中を見渡す。

ざわつく教室。中にはやはり獄寺の姿はない。

どこかしゅんとなりながら、ツナは自分の席に着く。

と、


「ツナ」


どこから現れたのか、リボーンが声をかけてきた。


「リボーン。獄寺くんは見つかった?」

「見つかった…が……」

「が…?」

「………」


リボーンは押し黙る。その様子にツナは不安を覚える。


「ちょっと…一体どうしたってのさ」

「いや…」

「いやじゃなくて。言ってくれないと分からないから」

「………」

「リボ―――」

「10代目!!!」

「獄寺くん!?」


聞き望んだ、待ち侘びた声がツナの鼓膜を刺激する。

獄寺だ。


「お待たせしましたーーーーー!!!」


ガララッ!!と勢いよく教室の扉を開けて獄寺が現れた。

一瞬、教室の時が止まった。

獄寺の格好はセーラーエプロンだった。


「ちょ―――」

「10代目!!」


ツナが言葉を放つよりも前に獄寺がつかつかとツナの前に立つ。


「今朝は大変申し訳ありませんでした!!!」


90度のお辞儀。エプロンとスカートが揺れる。


「いや、それはいいけどその格好、」

「お詫びに作り直してきました!!さぁどうぞ!!」


と、獄寺はツナの前に手に持っていた皿を差し出す。更の上には卵焼き(?)が乗っかっていた。


「お詫びはいいけどその格好は、」

「さぁ!!」

「………」


埒があかない。

少なくとも、この卵焼き(?)をどうにかするまでは。

ツナはポケットに手を入れる。

そこには今朝シャマルからもらった胃薬があった。

覚悟を決めるしかない…


「美味しそうだね!!いただくよ!!」


ツナは目玉焼き(?)を頬張った。

甘かった。

砂糖の塊が丸ごと入っているような甘さだった。

そして。


「…とってもおいしいよ、獄寺くん」

「本当ですか!?10代目!!」

「うん…だからエプロンを外してね……獄寺くん」


それだけ言うと、ツナは倒れた。


「10代目ーーーーー!!!」


獄寺は叫び、ツナは保健室へと運ばれた。

ツナは再び胃の洗浄。獄寺は泣き崩れた。


「すいません、すいません10代目…オレってばまた…」

「いいんだよ獄寺くん…獄寺くんのためならオレは何度だって蘇ってみせる―――」

「すいません、すいません……」

「………あー、じゃあさ、こうしようか。獄寺くん」

「はい?」

「今日の晩御飯。一緒に作ろう」

「一緒に…ですか?」

「そう。そして一緒に食べよう」

「でも…また10代目を倒れさせたら…」

「二人で作ったら大丈夫。きっと美味しいものが出来るよ」

「………」

「どう?」

「はい…とても……いい考えです……」


と、獄寺は泣きはらした顔で微笑んだ。


「やっと笑ってくれた」

「え…?」

「獄寺くん…ずっと泣いてたから…」

「だって…10代目を…」

「いいんだよそんなこと忘れて。それよりもオレは獄寺くんに笑っていてほしい」

「10代目…」


その言葉に獄寺は驚き、言葉をかみしめて…微笑んだ。


「はい…なら、オレはずっと笑っています。10代目」

「うん。そうして…それがオレの願いなんだから」

「10代目?」

「なんでもない…そうだ。晩ご飯はなに食べる?卵焼きは外せないとして」

「そうですね…実は卵を買いすぎてしまって。オムライスなんていかがでしょう…」

「いいね。オレオムライス大好き。じゃあ、一緒に卵焼きとオムラスを作ろうね。獄寺くん」

「…はいっ」


獄寺は微笑み、ツナと手を繋いだ。

その日の晩ご飯は、とてもとてもあたたかくておいしかった。


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その次の日も、そのまた次の日も。ずっとずっと。