救い救われ
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八つ当たり気味に言ってしまったオレに、しかしリボーンさんは気にした様子はなく呆れ顔でそう言った。

本当に馬鹿な話だ。馬鹿馬鹿しすぎて、そんな馬鹿なことも分からないような奴と同じ血がこの身体の中にも流れていると思うと発狂しそうになる。

奴らがオレに下した"罰"は、隠し通せるものではなく―――それ以前に隠す必要性すらないと思っていたらしく、ある日あっさりと世間様にバレて奴らは捕まった。

オレが不吉なんだから悪いと最後まで主張していて、どうやらそれは本気で本当にそうだと信じて疑っていなかったらしく、つまり自分に非があるなどと思いもよらず、最後まで罪はオレにあると言っていた。


「………そうか。だからあの時」


そう。だからあの時。


「お前は、自殺を図ったんだな」


オレは、自殺を図った。

奴らの乗る、汽車に轢かれて死んでやろうと。

最後の最後で、自分の意志で悪になってやろうと。

オレを散々不吉で、悪で、死んだほうがましだと言っていたのだから。

奴らの言った通り、言う通りになってやろうと。



―――カンカンカンカンカンカンカンカン


空には雲ひとつなくて、近くの木々からは蝉の鳴き声が聞こえて。

遠くからは電車の音。足元からは微かな振動が伝わってきていた。



「リボーンさん、自殺と分かっててオレを止めたんですね」

「ああ」

「よく分かりましたね」

「分からいでか」


馬鹿が、と呟かれた。


「あんなに警告機が鳴っているのに無視して進んで、遮断機が降りているのに乗り越えて。死ぬ気だったとしか思えねえよ」

「あはは」


そういえばそうだ。

オレとしたことが。


「どうして止めたんですか?」

「目の前に死にそうな奴がいたら、助けようとするものだ」

「誰にも見えず、触れられないのに」

「オレも驚いたよ」


あの時は本当に驚いた。

油断していた。警戒を解いていた。

誰にも邪魔されず、死ねると思ってた。


だって周りに誰もいないことなんて、とっくに確認済みだったのだから。


あなたに自殺を止められて、あなたの声を背中越しに聞いても、現実味なんてなかった。

誰もいないはずなのに、誰かがいるなんて考えれなかった。

あるいはオレはもう死んでいて、自覚のないまま死後の世界とやらに来たのではないか。とも考えた。


あなたの姿を見るまでは。

あなたの目を見るまでは。


誰もいないはず、とか。死後の世界かも、とか。どうでもよくなった。


あなたの目。

奇異の目じゃない、迫害の目じゃない、不気味がる目じゃない、気持ち悪がる目じゃない。

普通に、対等に、当たり前に―――オレを見てくれる、その目を見たとき。

そうだな、そうだ、その時だ。


オレがあなたの虜になったのは。