救い救われ
13ページ/全15ページ
「リボーンさんと別れたら、その時こそオレは駄目になりますよ」
「オレには、お前がそうやって決め付けて、勝手に諦めてるようにも感じるがな」
「それは酷い……」
あの日々の中で、あの目の中で。長年暮らして、無事な奴などいるものか。
それでも無事で普通というのなら、オレは弱くて構わない。
「誤解すんな。お前はこの一年しっかり休んで、回復したろ。目なんてまるで別人だ」
「………」
「オレがいたら、お前は前に進めない…いや、オレがいるから、お前は前に進まないんだ」
「それは…そんなことは……」
………。
ない、とは言い切れなかった。
リボーンさんが隣にいながら、他の誰かを見るなんて。リボーンさんを見ずに他の誰かと話すなんて。
「まあ、理由はそれだけじゃないがな」
「……え?」
「実はお前のことより、オレ自身の気持ちの方が強い」
「………もう、オレには会いたくないと?」
「言葉が足りん」
声の震えるオレに、しかしリボーンさんは気の張った声を出す。
「ちょっと欲が出た。オレも地面とやらを踏みしめてみたくなってな」
「……リボーンさん?」
「風とらやも感じてみたいし……つまり、あれだ。これから生まれてくる」
「生まれてくるって……」
「オレが成長するまで、お前は強くなれ。弱いお前と、オレはもう会う気はない」
「………っ」
「つっても、オレはお前が強くなるって確信しているわけだが」
―――カンカンカンカンカンカンカンカン
今さらのように警告機の音が聞こえる。その音は大きく、大きく、大きく。
「だから、獄寺」
リボーンさんは笑ったまま、話す。
大声を上げることなく、いつも通りの静かな口調。
だけどその声は警告機の音に紛れることはなく。
まるですぐ傍に、オレの隣にいてくれてるかのようにはっきりと―――
「また会おう」
オレの目の前を、汽車が通る。通り抜ける。
いつかの日のように。いつもの日のように。当たり前のように。多くの命を乗せて。
オレとリボーンさんの視界を遮る。
今すぐ踵を返し、どこかへ向かってしまいたい。
一刻も早く、この場から立ち去りたい。
そうしたいのに、出来ない。
分かりきった現実を、せめてもの足掻きに見たくないのに。
…あるいは、その思考こそがリボーンさんの言うオレの弱さかもしれないが。
汽車が通る。流れる。行ってしまう。
全ての車両が通り過ぎ、開けた視界のその先は、その先には―――
当然のように、分かりきった結末が待っていた。
誰も、いなかった。
次
前
戻