救い救われ
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喉が渇いたので、ジュースでも飲もうかと自販機の前に立つ。

財布を開け……小銭がなかったので札入れの方を見ればそこには一枚のチケット。

その昔、リボーンさんと初めて出掛けた日に見た、あの映画のチケット。


…10年もよくもったな……


捨ててもよかったのだが、どうしてもそんな気にはなれずずっと取っておいた。

無論、もう使えるものではないが……しかし懐かしいな。

これから映画でも見に行こうか?

そんなことを思ったら。


「獄寺」


声が。

懐かしい、酷く懐かしい、今思い出したばかりの、決して忘れたことのない、声が。

後ろを振り向く。


「やっと会えたな」


そこには、当然のように当たり前のように、何事もないかのように……一人の少年が立っていた。

年の頃は10歳ほど。背は小さい。黒い帽子に黒い服。黒い髪の黒い目で黒尽くめ。

無論、その姿が透けているということはなく。

その足はしっかりと大地を踏みしめて。その髪はそよぐ風に微かに揺れていた。

オレはなんと言うか悩み、財布に目を落とし、チケットの存在を認めて、


「リボーンさん、これから映画を見に行こうかと思ってるんですけど、よろしかったら一緒にどうですか?」

「動物ものがいいな」


あっただろうか。

最近の映画には詳しくないが、でも時間はあるし。ゆっくり探そう。

この人と一緒なら、きっとそんな時間ですら楽しい。

まるで以前からそう申し合わせていたかのように、オレたちは二人、一緒に歩き出す。

やっと会えた。また会えた。

その嬉しさは、きっと二人同じものだと思った。


―――それは茹だるような夏の日で。

アスファルトから陽炎が見えるほど暑い日だったことを、今でもよく覚えている―――


++++++++++

お帰りなさい、リボーンさん。