救い救われ
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その人はリボーンと名乗り、
オレも獄寺隼人と名乗り返した。
あれから。
歩きながら、その場を離れながら―――オレたちは話をした。
それにしても、警戒心の強いお方だ。
オレはもうその気は、ないというのに。
人のざわめきから離れた踏切から、街の中心へ。
少しずつ人の数が増えてきて、そいつらの目線がオレを見る。
…リボーンさんの姿は、まるで見えないかのように、そこにいないかのように、存在しないかのように―――周りの視線から外れている。視界に入っているはずなのに、目に映っていない。
いや、まるでではない。
本当に―――見えてないんだ。
周りの奴らは、リボーンさんを避けもせず……意識せず、真っ直ぐ進んでくる。
リボーンさんはその必要もないのだろうが、いちいちそれを避けながらオレと話す。(衝突してもすり抜けるらしい。気分の問題だろうか?)
「……リボーンさん、オレの少し前を歩いたらどうですか」
「その手があったか」
リボーンさんはオレの前に来て、オレの方に振り向き、後ろ手に歩く。
「それにしても、本当にリボーンさんは誰にも見えないんですね」
「そうだな」
「どうしてオレには見えるんでしょうね。半透明ですが」
「オレにも分からんが……だがお前がオレと話してくれる代わりに、お前が不審者がられているのが申し訳ないな」
「え?」
オレは辺りを流し見て、周りの奴らと目が合った。
そいつらの目は………ふむ。
奴らはオレと目が合うと気まずそうに背けて、早足に去っていく。
「周りから見たらお前は独り言を延々呟いているようにしか見えないだろうからな。悪い」
「いえ……別に」
さてどうしたものかと考えて、とりあえずオレは携帯を取り出して口元に当てた。
「誰かに電話するのか?」
「いえ、カモフラージュです。こうすれば少なくとも一人で話していても不審ではないかと」
「なるほど」
リボーンさんは納得した。
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