救い救われ
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翌日、再びオレたちは再会を果たした。

というか、昨日別れたあの場所。あの公園のベンチに昨日のまま、そのまま座っていた。


「よお、獄寺」

「………気に入ったんですか?ここ」

「ああ、気に入ったな。ここはいい」

「そうですか」


「気に入りすぎて、お前とここで別れてからお前と交わした会話をここでずっと思い返してた」

「………」


どうやらずっとここにいたらしい。


「リボーンさんには…帰る場所は、ないんですか?」

「ねえよ」


あっさりと。

こともなげに…リボーンさんはそう言った。


「誰の目にも入らず、誰の耳にも届かないオレに、帰る場所なんてない」

「オレには見えて、聞こえてますよ」

「そうだった」


忘れられてた……

オレはリボーンさんの隣に座り、携帯を取り出して口に当てた。


「誰かに電話するのか?」

「あなたと話すんですよ」


携帯は昨日と同じく誰かに見られたとき対策だ。まあ、誰にどう思われても構わないけど一応。


「なんだ?もしかしてお前、オレと話に来てくれたのか?」

「いえ、むしろもう二度と会わないだろうと思ってました」


昨日のことは、夢だろうと、そう思ってた。

もしかしたら、今この時だってオレの見る白昼夢かもしれない。


だけどそれでも。

またあなたと出会えたのなら、話したい。


と言っても、リボーンさんは基本受け手で、話すのはほとんどオレだけど。リボーンさんは相槌を打つばかりだけど。

それでもオレは楽しいし、リボーンさんにはそうせざるを得ない事情があるのだから構わない。


リボーンさんは、何も知らない。

何も。


…例えば、本がある。

リボーンさんは文字が読めるけど、どれだけ本に興味があってもその内容を知ることはできない。

本を持てないから。

本のタイトルを知っていても、カバーに書かれてあるあらすじぐらいは読むことができても、内容を知る術はない。


例えば、料理がある。

リボーンさんは食材の名前を知っているけど、料理を見ればその名前ぐらいは分かるかもしれないけど、それだけだ。

その料理の味も、舌触りも、食感も分からない。

料理を食べれないから。

知識はあるけど、経験がまるでない。

それがリボーンさんだった。