スラム街の片隅で
2ページ/全2ページ
二人が獄寺に声をかける。何事かと獄寺が振り向くと獄寺は驚いた顔をした。けれど声をかけた二人はもっと驚いたようだった。
「あれ?ディーノはまぁともかく…なんで内藤まで?」
「何言ってんのよー!マフィアなんだからイタリアにも来るって!!」
「はぁ?何だよその理論は」
呆れながらにも獄寺は笑いながら応えてくる。けれど内藤の方は内心は笑っていないようだった。
「そ、そんなことよりもスモーキン。そいつは…」
ディーノが引きついた笑いをしながら指差す"そいつ"。
「ん?ああ、さっきオレが馬鹿共に絡まれていたらこいつがビクつきながらそいつらに立ち向かってなー」
獄寺が嬉しそうに笑いながら指差す"こいつ"。
「び、ビクついてなんかないもん!」
はいはいと獄寺に言われながらも持ってる飴を手放さない仔牛が一匹。
ボヴィーノのマフィアランボが獄寺に抱きかかえられていた。
「…獄ちゃんって子供好きだったっけ?」
「あ…?いや別に。普通だけど」
「そ、そのわりには仲が良さそうじゃねぇか…」
「うるせぇなー、あほ牛が啖呵切ったあと腰が抜けて動けなくなったんだよ!悪いか!!」
「こ、腰なんか抜けてないもん!」
「はいはい…」
呆れ顔になりながらも獄寺のランボを持つ手にはどこか労わりのようなものが見える。
何があったか知らないが獄寺の中でランボの株はそれなりに上がったようだ。
獄寺の胸の中にいるランボに二人は少なからず切望の念を覚えたが相手は子供だと無理矢理自分に言い聞かせる。
――そこにランボが二人を見据えて。
…ニヤリ。
ランボは勝ち誇るように五歳に似合わない邪悪な笑みを浮かべた。
―――こ、こいつ…!
二人は悟る。この五歳児は…全て計算付くで行動を起こしたと。
子供だからと誤解していた。奴とて獄寺を狙う好敵手なのであった。
―――三人の間に眩しいほどの火花が散る。
ああ、いい。上等だ。
誰のものとも知れぬ聞こえない台詞にまた時は動き出す…
「獄ちゃん!オレさーイタリアに来たばっかでこの辺の事知んないのよね〜☆どこか良いとこ知らない?」
「…はぁ?お前本当に何しに来たんだよ。…ったく仕方ねぇな。あとで安いホテル教えてやるよ」
「やったね!晩飯付き合ってよ!お礼に奢るからさ!!」
獄寺ははいはいといった感じで適当に了承した。契約成立。
「だったらスモーキン。オレが迎えに来てやるよ。お前もう一週間も日本に戻ってないだろ?ツナたちの近況を聞かせてやる」
「10代目の?…そういうことならまぁ世話になるかな」
口ではそう言いながらも獄寺は嬉しそうだった。くそぅ。可愛い。
とにかく獄寺の送迎も決まった。ロンシャンの口車に乗せられて同じホテルに泊まるという暴挙も止められた。
「ゴクデラー」
「ん?なんだよランボ」
「ランボさん…ボヴィーノの場所分かんない……」
「はぁ?おいおいマジかよ…仕方ねぇな。じゃ、オレの部屋に来い」
「な、スモーキン!?」
「獄ちゃんっ!?」
「…な、何だよ二人して…別に良いだろ。ボンゴレがボヴィーノにこいつを届けるのもあれだし……」
いきなり様子が急変して戸惑う獄寺。ランボがまた邪悪な笑みを浮かべている。…獄寺には見えてないが。
トマゾファミリー8代目。内藤ロンシャン。
キャバッローネファミリー10代目。跳ね馬のディーノ。
そしてボヴィーノファミリーの刺客。ランボ。
そんな彼らが狙うボンゴレファミリー10代目の自称右腕。悪童スモーキン・ボムこと獄寺隼人。
獄寺を狙う三人はお互いの牽制に気を取られ。
獄寺はそもそも最初から気付いておらず。
このイタリアンマフィアの四人組はマフィア界でちょっとしたニュースになりこれを気に獄寺を狙う輩がまた増えたのであった。
++++++++++
何か最近賑やかだな。何かあったのか?
前
戻