数週間だけの日常
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その小さな身体に大きな毛布が掛けられていて。
何だか見ていて微笑ましい。思わず頬が緩む。
「…そう楽観している場合か?」
と。横から水を差し込んでくるリボーン。
「…楽観て、何のことさ」
「―――獄寺な、お前が出掛けてからずっとこの状態だ」
…え?
「ずっと?」
「ああ。朝からずっとだ」
…確かに。少し前からそんな兆は見せていた。数日前から獄寺くんはどこか眠たそうで。母さんも最近獄寺くんが昼寝していて可愛いと言っていて。
けど、これはお昼寝どうこうな問題じゃない。やはりこの身体では何かしら負担があるのだろうか。
「ちょ…どうしよう、リボーン」
「ま、そう下手に扱わねーようにだけ気を付けておけ。オレも手を打ってみる」
携帯を弄るリボーンを尻目に、オレは獄寺くんに駆け寄る。しかしここからどうすればいいのか分からない。
えと…ここは起こした方がいいのだろうか。それとも寝かせたままの方が…?
オレが意味もなく不安に駆られあわあわしていると、獄寺くんが目を覚ます。
「…あ。じゅーだいめ…おかえりなさいませ」
「う、うん。おはよう。獄寺くん…」
「オレ、寝てました…?」
「みたいだね」
獄寺くんは寝惚け眼で。オレを見上げて。けれどまだ意識がはっきりしてないのかその焦点は合ってなくて。
「…寒い?毛布持ってくるよオレ」
何だかじっとしていられなくて。何とか行動に移そうとして。立とうとすると何か小さな抵抗によって阻まれる。
「…獄寺くん?」
「あっすいません…でもオレ、あまり寒くありませんし…」
それは嘘だ。だって彼の腕に少しだけだけど鳥肌が立っている。
「それに…」
「それに?」
「ひとりは…寂しいです」
「すぐに戻ってくるよ」
「――ひとりは…やぁ、です」
オレの声は最早、彼に聞こえているのかどうかも怪しい。
ただその手だけを弱々しく。けれど手放さないようにと握られていて。
放っておくことは出来ず、オレはまるで腫れ物を触るかのような慎重な扱いで獄寺くんを抱き上げ、抱きしめる。
ひんやりとしていた身体はすぐに温まってくれたけど。それでも彼はオレの服の裾を掴んで話さない。
どうしよう…オレ、どうすればいいんだろ…
思い悩むことしか出来ない自分がなんとももどかしい。歯痒い。
どう声を掛けようかと思いながら彼を見てみると、その目蓋は閉じられようとしていて。
けれどオレは獄寺くんを寝かせたくはなくて。思わず声を掛ける。
「ご、獄寺くんっ」
「………はぃ」
「ね、眠いの…?」
「……ねむぃ…です…」
獄寺くんの力が抜けていく。まるで消えてしまうように。
「ご―――」
オレが叫び声を挙げてしまいそうになった瞬間。
煙が、吹き出て。
「ツナ。ジャンニーイチに聞いてみたがどうやらそれは元に戻る前兆らしい――って」
リボーンが、やってきて。
「…どうやら要らん情報だったみたいだな。ま、戻ってよかったじゃねぇか」
腕には、元のサイズに戻った獄寺くんが眠っていた。
「ん…」
「あ。獄寺くん起きた」
「じゅうだいめ…?」
「おはよう」
「おはよーございます…」
「………」
「………」
「……………」
「……あの」
「ん?」
「なんで、そんなに引っ付いてるんですか…?」
「んとねー、誰かさんがひとりは寂しいからいやなんだって」
「へ?」
「いやー、獄寺くんがこんなに寂しがりやさんだとは思わなかったなー…」
「え?へ?な、何のことですか!?」
「うんうん。もうオレが獄寺くんをひとりになんかしないから安心してね」
「ちょ、10代目!なに自己完結してるんですか!?聞いてますか10代目ー!?」
++++++++++
ああもう、やっぱり獄寺くんは可愛い!!
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