たとえ傷付き倒れても
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「…リボーンさん、今日はリボーンさんらしくないです」
「そうか?いつものオレってのはどんな奴なんだ?」
「いつものリボーンさんは、オレみたいな使い捨ての駒なんてすぐに見切りを付けれる人です。そして極悪非道で鬼畜です。更に自分ひとりだけ楽しければそれでいいって、そんな人です」
「随分な言われようだな。しかしそういうお前こそ今日はらしくはないな」
「…そうですか?いつものオレって、どんな奴なんです?」
「いつものお前は馬鹿で一直線で人を疑うことを知らなくてそこが面白くて殺しても死なないような奴だ」
「…酷い言われようです。オレは傷付きました。10代目に言い付けてしまいます」
そう言うオレに、リボーンさんは少しおどけて。
「おお怖ぇ。で、少しは生きて帰る気になったか?」
「あは、そうですね…まぁ生きて帰って。リボーンさんが、10代目に怒られるのも…見てみたい気もしますが」
ぐたり、と倒れる。血の絨毯が広がる。
「身体…動きません」
それから眠いです。
「ああ、なら寝ていろ」
今寝たら、もう、起きそうにないのですけど。
「獄寺。寝る前にオレの認識を改めろ。オレは確かに極悪非道で鬼畜でお前の意見なんてこれっぽっちもきかねぇしオレだけ楽しければいいかも知れんが」
…何気に増えてます。リボーンさん。
「でもな。――気に入ってる奴を殺させない程度の甲斐性ぐらいはあるんだよ」
ああそうですか。
でしたら貴方こそ。オレの認識を改めて下さい。
確かにオレは馬鹿で一直線で人を疑うことを知らなくてそこをよくからかわれて殺されたら死にますけど。
「途中から変わってきてるぞ獄寺」
心読まないで下さいよ。いや、読んでていいんですけど。
…とにかく。流石のオレも殺されたら死にますけど、それでも…
―――…好きな人の前では、少しぐらい生き長らえようと。してみたりします。
数瞬の沈黙。そして押さえきれない声での笑い声。
…この人が笑うなんて。珍しい。
「ああ、そうか。なら生き長らえてみせろ」
オレが意識を保っていられたのはここまでが限界みたいで。今まで起きていたのが嘘みたいにふっと暗闇に飲み込まれていって。
…だから。あれはきっとオレの幻聴だろうと思った。
オレの意識が暗闇に沈む前。リボーンさんがオレに向かって。
「好きな奴ぐらい。オレが守ってやるから」
なんて。そんなあの人にしては珍しい、似合わない。
…けれど少しだけ嬉しかった、甘い言葉を吐いただなんて。
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これはきっと夢だ。そうに違いない。
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