傷心
1ページ/全2ページ


怒ってる。オレは怒ってるんだよ獄寺くん。

オレを置いていった事。そして何より、オレを騙したことを―――怒ってるんだよ獄寺くん。


キミはいつも、口癖のように「貴方を守ります」なんて言ってきて。

それを言われる度に、オレがどれほど不安になったか、キミは理解していた?

それを聞く度に、オレはキミに守られまいと。頑張って訓練して強くなって。


でも、本当は……


ああ、でも。全ては無駄になっちゃったね。

だって、キミはもうこの世にはいないのだから。

キミがいつも、口癖のように言っていた事に―――なってしまったから。


オレを守って―――死んでしまったから。


あの日、オレは風邪で倒れてて。キミはそんなオレを付きっ切りで看病してて。

元はといえば、オレの無茶が原因なのに。キミは全てが自分の積にあるみたいな顔をしていて。


10代目が倒れるまで気付けなかったなんて、右腕失格ですオレ…!!


違うと、一言キミに言えればよかった。キミにだけは心配を掛けたくなかったから隠していたと言えればよかったんだ。

たとえ言ったとしても、キミは自分を責めることをやめはしなかっただろうけど。それでも言えればよかったんだ。

けど、その時は頭が痛くて。意識はぼんやりしていて。喉はからからで。声は出てきてくれなくて。


…ただ、キミを見上げることしか出来なくて。


……?今物音が聞こえました。少し様子を見てきます。


待ってと。一言キミに言えばよかったんだ。物音程度でキミが行く必要はないと。それよりも傍にいてほしいと。言えばよかったんだ。

たとえ言ったとしても、キミは行く事をやめはしなかっただろうけど。それでも言えばよかったんだ。

でも、その時は寒気が酷くて。身体は浮いてるような感じがして。頭は痛くて。上手く思考が働いてくれなくて。


…だから、キミを見送ることしか出来なくて。


―――外にいたのは、オレを、ボンゴレ10代目を殺しに来た刺客で。

そして、そいつにキミは気付いて。だから単独で迎え撃って。

そして―――死んだ。刺客と刺し違えて。