傷心
2ページ/全2ページ
いつものキミなら、死ぬこともなかった相手だった。
けれど、キミは付きっ切りでオレの看病をしていて。
オレの風邪はキミに移ってなかった?いやそれよりも、キミはオレが風邪を引いて倒れてから……唯の一度でも、睡眠を…休息を取った?
そんな状態で迎え撃っても…向こうだってボンゴレ10代目なんて大物を暗殺するのに半端な刺客を送ってきたりはしないだろうに。そんな事。キミだって理解していただろうに。
なのにキミはオレに心配を掛けまいと、そうやってオレを気遣って。そして―――いってしまった。
オレは怒ってる。怒ってるんだよ獄寺くん。
オレに嘘を付いたこと。…物音なんてしなかったのに、オレを守るためにオレから離れる嘘を付いて。
キミがオレから離れていく時、オレはキミの背中を目で追って。それに気付いたキミは困ったようにくすりと笑って…
大丈夫です…すぐに戻ってきますから。
なんて言ったくせに。でもキミは、二度とオレのところへ戻らなかった。
それはオレの為だって、知っているけど。キミがそういう人だって、知っていたけど。
オレは怒ってる。怒ってるんだよ獄寺くん。
分かっていたのに。それでも行かせてしまった…キミを殺してしまった、オレ自身に。
キミがオレに「命を賭けて守ります」なんて言う度に、オレの心は締め付けられて。
でも、その頃は確かにオレは、キミに守られないと生きていけないほど弱くて。
だからオレは、キミに守られまいと身体を鍛えていって。強くなって。
…でも本当は、オレは―――
オレは、キミを守りたかった。
いつもオレの為に無茶をするキミを。オレの力で守りたかったんだ。
そして…オレがキミを守れるようになったら、キミにオレの想いも伝えたかった……
でもそれももう出来ない。言うべき相手がもういない。
キミが消えてからオレの心はどんどん死んでいって。感情も消えていって。
もう楽しいも、嬉しいも、忘れてしまって。
覚えている感情はただ一つ。…さっきから何回も言ってるから、分かるよね。
オレの最後の感情は怒り。きっとこれすらも消えたら、オレは生きる意味すら失うのだろうね。
だってオレが怒らなくなるってことは、つまりオレがオレを許したってことだから。
……キミを殺したオレを、許したってことだから。
オレがオレを許せない今は、キミに合わせる顔がなくてキミのところにいけないけど。
…でも、オレがオレを許したときは、オレはこの世に見切りを付けてキミのところへといくのだろうね。
―――何だか矛盾だ、と思う。けれど笑う事も出来やしない。笑い方なんて忘れたから。
オレはオレを許すオレを決して許さないけど。
「ツナ。……時間だ」
でも、そんな中でオレは、キミのところへといける日を…ずっと待っている。
「今行くよリボーン」
オレの心はまだ癒えずに、全ての感情が消える日を待っている―――
++++++++++
感情が消えるのが先か、肉体が朽ちるのが先か。
前
戻