遠い想い
1ページ/全1ページ


あなたがこの世界から消えて。

オレはあなたのことばかり考えるようになりました。


あなたがこの世界から消えてから。

オレの胸はぽっかりと穴が空いたよう。

不思議ですね。

オレはあなたに、苦手意識を持っていたはずなのですが。


あなたのことは嫌いではなかったし、

あなたのことは尊敬してましたけど。


でも、それだけで。


まさかあなたがいなくなった程度で、こんなにも喪失感が湧くなんて。思いもよりませんでした。

もっと、淡白に。冷静に日々を過ごせると、本気で信じていました。


なのに、頭の中は何故だかあなたのことばかり。

何かあるたび、あなたならこうするだろう、こう言うだろうと思うばかり。


そうしてあなたの思考を追っていると、

そうしてあなたの思考を読んでいると、

今までは気付くことが出来なかった、あなたの優しさや気遣いが垣間見れて。

…その優しさや気遣いが、オレにも向けられていることを知って。


オレは、あなたのことは嫌いではありませんでしたけど、

オレは、あなたに嫌われていると思ってましたよ。


オレは、あなたのことは尊敬してましたけど、

オレは、あなたにどうでもいいと思われていると思ってましたよ。


なのに、それなのに。


そうではないと、そうなんだと、今初めて気付きました。

そのことに、あなたがいなくならなければ気付くことすら出来ないなんて、なんて愚か。

オレはあなたがいなくなってから、あなたに惹かれていきました。

遅すぎる思い。意味のない慕情。

ふと空を見上げて、人知れずため息を吐く。


―――こんなオレをあなたが見たら、あなたは何と言っただろう。


++++++++++

想像の中、都合のいいあなたは気のせいか、どこか優しい顔をしていた。