もう一度だけでも
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「認めないっていうけど…隼人は。これを見てもそんなことが言える?」
ぱちんと明かりのスイッチを入れて。この空間に光を灯す。
彼の綺麗な顔が見えた。
ただ悲しいのは、彼はオレではなく、そこらに倒れているのを見ていること。
彼は愕然としながら、"それら"を見る。
「そ……んなっ?山本…雲雀………それに―――っ!?」
ああ、もう。駄目だよ。
お願いだから、オレを見て。
オレはそれらに駆け寄ろうとする彼を無理やり引き止めて。そのまま勢いあまって押し倒した。
「隼人」
「オレを見て?」
「声を聞かせて?」
「そこらに転がってる物なんて見ないで」
「オレを。オレだけを見て?」
「じゃないと」
何の為に、オレが彼らを。心から信頼出来る彼らを殺したのか分からないじゃない?
「―――オレに逢いたいが為に、ボンゴレを裏切ったんですか」
「裏切った…そうだね。ああ、裏切ったのなら、隼人じゃ慣れなれすぎるか……じゃあ、スモーキン・ボム?」
「……そんな事を言う為に、あいつらを殺したんですか」
「うん。そうだよ…キミのいない生活は今にも狂いそうだったから」
いや、違うか。
狂いそう、ではなく。オレは既に狂ってる。
そうでないと、オレが彼らを殺せるわけがない。
…じわりじわりと。命の源が溢れ出て。彼に纏わり付く。
「ねぇ隼人」
いや、スモーキン・ボム?とオレは言い直して。
「―――――オレを殺して?」
「……オレが何もしなくても。貴方はもうじき死ぬじゃないですか」
…流石。よく分かってる。
「…リボーンさん、ですか?」
「そう…すごい手強かったんだよ。死ぬかと思った」
結局は、オレが勝ったわけだけど。
「―――でも。それじゃリボーンに殺されたことになるじゃない」
それは嫌だよと。生真面目な声で言う。そして、どうせ死ぬならキミの手で死にたいと。
彼は戸惑っているようで。けれどオレが再度促すと了承してくれた。
「分かり…ました。事が起こった原因がオレにあるのなら。―――けじめを、取らせて頂きます」
そんな彼の顔は、今にも泣きそうで。
それでも、彼は懐から小さなナイフを取り出して。震える手で、構えて。
オレは時期に来る安らかな死を目前に、彼の目蓋にキスを一つ落とし、彼の耳元に唇を寄せる。
「隼人」
裏切ったオレは、もう二度とキミには逢えないね。だから。
「さよなら」
沢山、たくさん迷惑掛けちゃったね。だから。
「ごめんね」
…でも、最後にキミが来てくれて、嬉しかった。嬉しかったんだよ獄寺くん。だから―――
「―――――ありがとう」
++++++++++
キミにとっては、いい迷惑だっただろうけど。それでも言いたかった。
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