マフィアな死神
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「どうしてオレを殺さなかった?」
オレがそう問うと、千葉は「ほお、」と言葉を漏らした。
「気付いていたのか」
「まぁな」
世の中に「死神」と呼ばれる者たちがいるのは知っていた。オレも話で聞いていただけの知識しか持ってなかったが、まさか本当に会う日が来るとは。
「勘違いしているようだが、私はリボーンを殺してない訳じゃない」
「なんだ、ならオレは今日にでも死ぬのか?」
「本来なら、その予定だったが…」もう少し長生きする、と千葉は続けた。
「もう少しか」
「ああ。リボーンはいずれ死ぬ」誰だってそうだ。オレは思わず突っ込んだ。
「死なないんじゃなかったのか?」千葉は至極真面目な顔で問うて来た。そういえばそんなことも言った。
「オレが死なないから、オレを殺さなかったわけじゃないだろう」
「だから、私はリボーンを殺してない訳ではないと」
会話がループしてきた。
「……はぁ、だからオレが聞きたいのはそこだ。オレが今すぐ死なない理由はなんだ。オレがアルコバレーノだから、じゃあるまい」
無論だ。と千葉は即答した。そうか無論か。じゃあなんだ。
「獄寺だ」
「は?」
「リボーンを殺したら、獄寺とも別れなくてはならないだろう」
それはつらい、と返された。いや、お前ちょっと待て。
「だから『保留』と報告した」
「保留?」
「保留」
初めてのパターンだったが、と千葉は続ける。認められた。と。
「いつ保留が解かれるかは私が決める。それまでずっと私はここにいる。そして私が上司に「やっぱり『可』だな」と言えば恐らく次の日に、リボーンは死ぬ」恐ろしいことだ。
「はぁ…じゃあオレが今生き永らえてんのは、」獄寺のおかげかよ。
「そうだな」
あいつ…とうとう死神ですら惹き寄せやがった。
「つまりリボーンが死ぬのは、」
「獄寺が死んだ次の日か…」オレの命を握っているのはどうやら千葉じゃなくてあの危なっかしい獄寺らしい。更に恐ろしい。
しかし…こいつ。
オレは千葉に手を差し出す。
「?なんだ?」
「お前、オレのこと完全に舐めてるだろう」
「舐めてなどいない」かなり真面目に言われた。意味が違う。
「…格下に見てるって意味だ。いいから、オレと握手しろ」
「しかし…」千葉がたじろいている。珍しいものを見た気分だ。
「いいから」オレは半ば無理やりに千葉の手を掴んだ。素手の千葉の手を、だ。
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