マフィアな死神
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部屋を出ると、骸がいた。どこか不機嫌な気がする。


「どうしてアルコバレーノを殺さなかったんですか?」


またか。同じ事を聞かれた。


「貴方でしたらアルコバレーノも人間も苦もなく変わりなく殺せるでしょうに」

「そうだな」と言おうとして、止める。そうでもなかった。

「いや、少しくらい苦はあるかもしれない」

「え?」


私たち死神は、規則で素手で人間に触れてはいけないことになっている。

触れた場合死神には罰則を与えられ、人間は極度の貧血状態に陥り倒れ、更に寿命が一年縮む。

…その、はずだったのだが。

リボーンは顔色が悪くなったものの倒れはしなかった。驚く私を見てしてやったり。の表情を作って見せたぐらいだ。

そのあとすぐに「疲れた」と言って眠ってしまったが、それでも私から見れば驚嘆に値するものだった。獄寺の言う通り、確かに凄い。認めることにした。


「…だから、殺さなかったんですか?」


骸はまだ問い掛けている。リボーンと同じように話そうとして、思い止まった。別の言い方でもいいか。


「何にでも、例外は付きものだ」


私は骸には上司と同じ説明をした。流石に一人の人間に執着して、と言うのは認められない。

しかしその通り、これは例外だった。

私が愛してやまないミュージックが人になったような人間がいたり、死神に触れられても気絶しないアルコバレーノとやらがいたり。

その二人がいる世界を私が面白いと感じている事実すら、いつもならばありえない。つまり例外だ。


骸とはそこで別れた。そして廊下を歩いていくと、今度は獄寺と会った。隣に一人、見知らぬ人間がいた。


「千葉…リボーンさんとの話はもういいのかよ」

「ああ、済んだ」


と言いつつ、私は目の前の人間は誰だろう、と思った。思った通りに聞いたら、獄寺は一瞬きょとん、として。だけどすぐに、


「てめぇ…仮にもボンゴレの構成員がリボーンさんの部下がオレの同僚が10代目を知らないたぁ一体どういう了見だーーー!!!」


ああ、なるほど。彼が獄寺の本体の10代目か。なるほど。


納得しつつ私は獄寺の思いっきり反動を付けられて放たれたドロップキックにより遠くに吹っ飛んでいた。

私に痛覚はないため痛みは感じなかったが、それでも壁をぶち破りガラガラと瓦礫に埋もれた衝撃は未だかつてないほどだった。

彼の凄いと言うリボーンも確かに凄いかも知れないが、きっと一番凄いのは獄寺だ。


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ひとまず、「よろしく」と私はこれからの日々に挨拶した。