マフィアな死神
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彼女と擦れ違ったのは、私が獄寺とリボーンと共に歩いているときだった。いきなり声を掛けられたのだ。


「あら。知らない顔ね」


振り返れば銀髪の女がこちらを見ていた。何故か獄寺が顔色を悪くした。


「姉貴!」


姉弟なのか。なるほど、そういえば似ている箇所もある。まぁ人間と言うのはみな似たり寄ったりだが。


「どうしたんだ?」

「いつものことだ気にするな。…ビアンキ。オレの新しい部下だ」

「千葉です」

「あら、そうなの。初めまして、リボーンの愛人のビアンキよ」


そう言ってビアンキは私に手に持っていたバスケットを差し出してきた。中にはクッキーが入っている。


「お近付きの印し」


なるほど。私は礼を言ってバスケットの中に手を伸ばした。食欲はないし、食べる必要はないのだがこれが礼儀だというのは知っている。

息を呑む気配がした。獄寺だった。はて、彼は一体何をあんなに慌てているのだろう。

疑問に思いながらも私はクッキーを口に入れた。味覚を持ち合わせてないので味はしなかったが、飲み込んだあと「美味かった」と言った。棒読みだった。

しかし奇妙だったのは周りの反応だった。みんな驚いていた。リボーンですらどこか拍子抜けしたような表情だった。みな無言だったが、言葉にするなら「あれ?」だろうか。

その様子に私が怪訝顔になっていると、ビアンキは「口に合ったようでよかったわ」と言って去って行った。首を傾げながら。

彼女が去ったあと、獄寺が口を開いてきた。顔色は直っていた。


「お前、毒に耐性があるのか?」

「どうして分かったんだ」今度は本当に口に出してしまった。私たちは、毒は効かない。

「あいつの作るものは全部毒なんだよ」


リボーンがそう教えてくれた。触るものが全部毒になるときもあるとも言われた。人間離れしてるな、と人間でない私は思った。


「本当に大丈夫なのか?」


獄寺が気遣うように声を掛けてくる。何がそんなに心配なのかよく分からなかったが、大丈夫だと返した。獄寺は目を輝かせた。


「すげぇ」


どうやら私は凄いらしい。そういえば昨日も彼はリボーンのことを凄いと言っていたな、と思い出した。


「リボーンとどっちが凄い?」

「え?」


獄寺は一瞬だけきょとんとして、私とリボーンを見返して…私を見た。


「今限定で千葉!!」


勝った。何故か嬉しかった。