小さな子供の行く末は
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目が覚めると、そこは柔らかいベッドの上。
………?
ゆっくりと身を起こして。辺りを見渡す。
白を基調とした室内にかおるは消毒水とコーヒーの匂い。
見覚えのない部屋だった。
…ここは…一体?
「目は覚めたか?」
声が聞こえて。それを追うと一人の男の姿。
それを見て思い出されるは目を覚ます前の記憶。
そこで腕に違和感を感じて。見てみると赤い血液は消えていて代わりに白の包帯が巻かれていた。
「もっと寝とけ。お前熱があるんだぞ」
男は僕の頭をぽんぽんと叩いて。僕をベッドへと寝かす。
「全く…なんで誰にも話さなかった?数日前から身体の不調には気付いていただろうが」
身体の、不調…
確かにここ何日か前から食欲がなかったりふら付きを感じたり上手く思考が纏まらなかったりしたけど…
けれど、それをなんで黙っていたかって。それは簡単で単純なことだ。
「…から」
「ん?」
「いう ひつようが、なかったから」
何故だか男は言葉を失った。
けれどだって、誰かにこんなことを話すなんて本当に必要も意味もないことだ。
だって、自分は獄寺の子供なのだから。
換えの利く子供。使い捨ての子供。大人の物。それが自分たちなのだから。
それが常識。この世界の常識。僕の常識。
だけどこの人の反応を見る限り、もしかしてそれは違うんだろうか。
僕には分からない。ああ、それよりもそんなことよりも気になることがあるんだった。
「…あの、」
「なんだ」
「僕は いつ捨てられるんですか?」
「あ?」
「僕は服を汚しました。僕は大人の呼び掛けに応えませんでした。僕は要らない子です。不必要です。だから捨てられます。それはいつですか?」
「………」
男は暫く黙っていた。
そして…僕の頭をわしわしと少し乱暴に撫でて。その手を目の上まで持ってきて。
「寝ていろ。…ったく、この屋敷の人間は…」
男は僕の質問には答えてくれませんでした。
しかし不要な物である僕が質問をすること自体が愚かだったんでしょう。
僕は男の言う通りに眠ることにしました。
眠って起きたら。捨てられているんだろうか、なんて思いながら。
++++++++++
けれど予想と反して。
僕は目が覚めてもベッドの上に変わらずいました。
直ぐそこには、あのひとがいました。
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