小さな子供の行く末は
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けれどそれが切欠で、オレと隼人は再度の接触を果たし。
それからも隼人のピアノの演奏会がある度にオレの元へと運びこまれるものだから、いつの間にやらオレは隼人の世話係のようなものになっていった。
隼人は気付けばオレの後をちまちま着いてくるようになっていて。
その姿はまるで親鳥を見つけたひよこを髣髴させて…なんとも微笑ましい。
「シャマル、Dr.シャマル、」
「ん?」
隼人はオレに構ってもらえることがそんなにも嬉しいのか、ことあることにオレの名を呼んで。着いて来て。
その度にオレは仕事の合間にだが簡単な遊びを教えたりして。隼人はそれすらにも興味深そうに覚えていって。
…その姿を見ていると、何故だか無性に切なくなる。
遊びと言うものを知らない。誰も教えてくれない。そしてそれを当たり前のこととして認識してしまっている。
それを言うなら他の獄寺の子供だってそうだろうが、あいつらはあいつらで何とか自身で折り合いをつけていた。
けれどこいつにはそれが出来ていなかった。身体と心が壊れていく一方で、そしてそれを誰もが助けなかった。
何故ならこいつは誰にも何にも期待されていないから。
親に見離された子供。誰にも求められない存在。独りで余計な波を荒立てればそれこそ文字通りに捨てられる。
何よりも悲しいのは、こいつがそれを理解して。そして受け入れてしまったということ。
…そう、しないと本当に捨てられてしまうとはいえ。
「…シャマル…?」
無意識に手が伸びて。オレは隼人の頭を撫でていた。
隼人は暫く不思議そうにオレを見ていたが、やがて気持ち良さそうに目を細めて。気が付いた時には眠っていた。
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こいつを助けられるのはオレだけだと思ってた。
そうだと信じてた。
そうだと思い…込んでいた。
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