陳腐な奇跡
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小さな部屋に大きなベッド。

小さな窓に大きな扉。

それだけが、今の彼の全て。


「や…。また来たよ」


…ああ、オレもいるか。


「獄寺くん」


オレが声を掛けたとしても。獄寺くんはオレに応えない。


「…昨日と比べて、今日は寒いね。今夜は雪が降るかも」


いくら声を掛けたとしても。獄寺くんはオレに笑い掛けたりしない。


「ああ―――でも」


そう、全ては―――


「あの日の寒さと比べれば、今日なんてまだ温かいほうかな?」


あの日から。全ては狂ってしまった。