飛び出セ☆ツナ父
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ツナが渋々ながらお茶を注いでいる頃。獄寺は京子とともに街を歩いていた。

片手にはクレープ。もう片手には先程の店で買った下着が数点入った袋を持って。


「今度着た姿見せてね」

「いや…見せないだろう普通」

「体育の授業で体操着に着替える時」

「ああ…。そうか。じゃあ体育があるときにはこれ着ていくな」

「うん。私もその日には今日買ったの着ていくねー」


そんな会話をしながら手にしているクレープをぱくり。甘い香りに包まれる。


「おいしいねー」

「ああ。10代目の分も買えばよかったかな…」

「うーん、でもこういうのは何故か買ってすぐ食べるのがおいしいんだよねー」

「そうかもな」


クレープを食べ終わると今度は雑貨店巡り。

可愛い小物を見て回る。獄寺がストラップを買っては鞄に括り付けていた。

普通の日常を味わう二人。獄寺も京子も笑いながら次の店へと歩いていく。

そんなほのぼの空気を獄寺が全身に身に纏っているとき、ツナ父宅ではシリアスな空気が流れていた。


「…で、何しに来たのさ。リボーン」

「お前が定期連絡を怠るからオレがわざわざ聞きに来てやったんだ」

「ああ…そっか。忘れてた」


わざとらしい。と憤慨するリボーン。


「―――少しずつ」

「ん?」

「少しずつだけど…外の世界に興味を持ち出してきているよ…」

「そうか…」

「どうにかオレの所に引き止めているけど…そろそろ限界…なのかな…」

「………」


沈黙が降りる。そして。


「…昨日」

「ん…?」


リボーンが沈黙を破った。


「昨日の夜…獄寺は自室でひとり。泣いていたぞ」

「え…あ、」


昨日の最後を思い出すツナ。

正直、忘れていた。今朝の獄寺があまりにも元気だったから。


「お前に迷惑を掛けたって。泣いてたぞ」

「………」

「いくら獄寺が外に興味を持とうと友を作ろうと、お前が獄寺を想う心も今日までの生活も消えるわけでもない」


もう少し自信を持つべきだな。

そう言って、笑みを浮かべ茶をすするリボーン。


「うん。…ありがと。なんだかリボーンに元気付けられるなんて変な感じ」

「お前がしょげてると獄寺が落ち込むからだ」

「あー、そうですか。そうともリボーンはそういう奴だよ」


そうしてまたも沈黙。けれどもそれは居心地の悪いものではなくて。暫し二人してそれを味わう。


「…ってそういえば」


その沈黙を次に破ったのは。ツナ。


「なんで昨日獄寺くんが泣いてたって…知ってるのさ」

「ああ。昨日獄寺と一緒に寝たからな」


「待て」


ストップ。ていうかなんということだ。そんな事態に陥っていたのかよ。


「待つのはお前だぞ。獄寺をひとり泣かせて、お前はなにをしてたんだ?」

「え…ああ…骸と寝てたけど」

「―――」


おっと珍しい。リボーンが言葉を失った。


「あ。リボーン少し誤解してる?」

「………お前…自分のことを想ってくれてる娘ひとり放置してなにを…」

「だからそれ誤解が生まれてるから!!」

「ていうか骸は敵じゃねーか」


そういえば少し前、「ボンゴレ」を狙う刺客として骸の事を報告していたのだった。あれからすっかり毒気の抜けたような骸にそんな印象はきれいさっぱり消えていたが。


「敵…そうだね。そういえば聞いてよリボーン。獄寺くんてばなんかいきなり彼氏作っちゃって…」

「彼氏…?」

「そう。彼氏」

「………」

「………」


「………そうか。鬱だな。死ぬか


「ちょっと待てーーー!!なんだその結論!ていうか、ちょ、え、駄目だってばそのロープ仕舞えーーー!!!


あまりのショックのあまりに自殺を図ろうとするリボーンをツナは必死で止めていた。



そんな愛が痛くも苦しい二人を親として慕う獄寺はその頃。



「あー…もうこんな時間だね。そろそろ帰ろっか」

「そうだな。じゃあまたな笹川。今日は楽しかった」

「あはは。そんなに楽しかったなら、また一緒に放課後デートしようね」

「ああ。楽しみにしてる」