飛び出セ☆ツナ父
12ページ/全15ページ


軽くそう言い放つリボーン。

そこにはつい数十分前まで自殺を図ろうとしていたとかそんな影は微塵も見えない。


「あはは。ありがとうございます、リボーンさん」

「楽しかった?変な奴に絡まれたりしなかった?」

「あ、楽しかったです!でも帰り際にですね…」


その後。

京子との放課後デートから帰宅までを事細かに親二人に話した獄寺。

その結果として運悪く獄寺をナンパしてしまった男の行方は…誰も知らない。


「…さて、それじゃあそろそろ寝ようか」

「あ。はい」

「オレも今日は泊まって行くぞ」

「そうなんですか?じゃあ…」


獄寺が何かを言いかけて。止まる。


「…ん?獄寺くんどうしたの?」

「あ…いえ、その…」


なんとなく獄寺の言いたいことを察したツナが優しく獄寺に問いかける。


「なぁに?獄寺くんのしたいこと。言ってくれないとオレわかんないよ」

「え…あ、その…」

「うん」

「その…その、―――三人で一緒に…寝たいなって、その…」


それはほんの先日。骸との時も似たようなことを言って…そしてきっぱりと断られた獄寺。

願望を言うと同時に、そのときの苦い記憶が戻ってきたのか顔をしかめる。


「えと…その、だ、駄目ですよ、ね。あはは…」

「いいよ」

「え?」

「リボーンならまぁ、獄寺くん相手に変な気も起こさないだろうしね。ぎりぎりおっけーだよ」

「本当ですか!?」


ぱぁあ…っと顔を輝かせる獄寺。嬉しそうだ。


「川の字!三人で川の字で寝てみたいです!いいですか!?」

「いいよ。リボーン相手だとたぶん川の字には見えないと思うけど」

「嬉しいです!ありがとうございます、10代目!!」

「うん。…そんなに嬉しい?」

「はい!あ、オレ準備してきますね!!」


ぱたぱたと走り去る獄寺。

それを見送るツナとリボーン。


「…まさかあんなにも喜んでくれるとは…」

「おめーもまだ獄寺の理解が出来てねーな」

「む…どういう意味だよ」

「そのまんまの意味だ」

「だから…」


追及しようとするツナだったが、それよりも前に準備を終えたらしい獄寺が戻ってきたのでお預けとなった。



暗い室内。部屋の中には三つの影。

明かりは窓から差し込む淡い月明かりのみで。ベッドの中で三人は穏やかな休息についている。

獄寺はリボーンをぎゅっと抱いて。その獄寺は後ろからツナに抱き締められて。

最初は少し暑がっていた獄寺だが、今は幸せそうに眠っている。


「…なぁ、リボーン」

「なんだ」


獄寺を起こさないように、小声で話す二人。


「オレは…オレはさ。獄寺くんを守っていきたいよ…?」


小さく呟いて。その身に収まっている獄寺をぎゅっと抱き締めるツナ。


「この想いは紛れもない本物…なんだよ?」

「ああ、そうだな」

「でも…さ。この想いは…獄寺くんにとっては邪魔でしかないのかな…」

「………もしそうなら」

「ん?」

「もしもそうなら、少なからず獄寺は態度に表すだろ」

「そうかな…」

「そうだ。言っただろう。もう少し自信を持てと」

「ん…うん。そう…だね。ありがと。リボーン」

「まったく。馬鹿が馬鹿なことで悩むんじゃねぇよ」

「あはは、ひでー」


…それから暫くして。二人も眠りに着いた。


「ん…」


朝。一番に目が覚めたのは獄寺だった。

なんだか夢を見ていた気がする。

すぐ隣で眠っているツナが何かで悩んでいたような。そんな夢。


「…?」


ツナを起こさないように獄寺は身を起こす。しかし代わりにリボーンが起きてしまった。


「早いな。獄寺」

「あ、ごめんなさいリボーンさん。起こしてしまいまして」

「それはかまわねぇが…まだ朝早いんじゃねーのか?」

「いえ、やりたいことがありますので…この時間でいいんです」

「やりたいこと?」

「ええ。…実は―――」


………。


「んー…よく寝たーってあれ。誰もいないし…」


カーテンの隙間から差し込む朝日の光を当てられて、まどろみの世界から這い上がってくるツナ。

しかし目を開けるとすぐ隣にいたはずの愛娘の姿が見えない。はて。一体どこへ行ってしまったのだろう。

未だ眠気を振り払えない、そんなぼんやりとした思考でうつらうつらとしていると…