飛び出セ☆ツナ父
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「クフフ。おはようございます。隼人くん」
獄寺がラルの去った方向をぼんやりと見ていると、また背後から聞きなれた声が聞こえた。
振り向くとそこには思った通りの人物。六道骸の姿があった。
「おはよう骸。あ。獄寺くんの半径五メートル以内に近付かないでね?」
「相変わらずですねぇボンゴレ。少しぐらいは僕たちのこと認めて下さいよ」
「認めねぇよ。調子に乗るなこの野郎」
ツナは男には厳しかった。
そんなツナから辛辣な言葉を浴びる骸の背から、小柄な身体がぴょこりと顔を出した。
「………」
「え?女の子?誰…?」
予測してなかったツナは不意を突かれて。骸の背から出てきた女の子はツナを真っ直ぐに見ながらぽつりと呟いた。
「…兄さんを。虐めたら。駄目」
「へ?兄さんって………骸が?」
「おやおや。僕を庇ってくれたんですか?ありがとうございますクローム。でも僕は別に虐められていたわけではないですよ」
「…本当?」
無垢な表情で骸を見上げる少女。それに骸はにこやかな笑みで答えた。
「ええ。あの程度で虐めとか騒いでいたらボンゴレとは付き合っていけませんからね」
「ふーん…」
理解したのかしてないのか。クロームと呼ばれた少女はまた骸の背に戻った。
「では改めまして。おはようございます。隼人くん。ボンゴレ」
「ああ。おはよう骸」
「おはよ」
三者三様の挨拶のち。骸の背後の少女がお辞儀を一つ。
「骸…その子、前に言ってた妹?」
「ええ。そうですよ。折角なので紹介しておきますね。僕の妹のクロームです」
ぺこり。
片目を眼帯。身を緑の制服で包んだ少女が頭を下げる。
その口元は言葉を出すのを拒むようにへの字にきゅっと閉じられていた。
「おやおや…もう少し愛嬌があるともてると思うんですけどね。で、こちらが僕のガールフレンドの隼人くんとそのお父上のボンゴレです」
「…せめて名前で紹介してくれないかな」
ツナがそうぼやいていると、クロームは顔を上げてじっと獄寺を見ていた。
「…?なんだ?」
「…兄さんの。ガールフレンド…?」
「?ああ…それが?」
その言葉に何故かツナがガンガンと校門をぶん殴り始めた。
友達感覚なんだと分かっていたとしてもやはり娘の口から同意の言葉が漏れると堪えるらしい。
ともあれ。そんなツナの奇行をまったく気にも留めないクロームは更にじっと獄寺を見つめて。
「………お姉さま?」
―――スカートのプリーツは乱さないように。
白いセーラーカラーは翻さないように。
ゆっくりと歩いていくのがここでの嗜み。
並盛中学校。………ここは獄寺の通う学校。
「…だからなんなんだこの脳内を侵食するような文の洪水はーーー!!」
ツナが更にガンガンと校門を殴っていた。あとで風紀委員から苦情が来ないか心配だ。
「クフ…クフフフフ。クローム。貴方も中々面白いことを言いますね…」
「そうですか…?でも…兄さんのお嫁さんは…お姉さん」
「お嫁さん?」
正論といえば正論を言うクロームに、一人着いていけてない獄寺。
「…おっと。そういえば隼人くん。時間は宜しいのですか?」
「時間…?あ!10代目!!なんだかもう現在時刻がどれだけ急いでもHRには間に合わないような時間になってます!!」
「げ!やばい本当だ!!じゃあオレたちはもう行くから!じゃあね骸!クローム!!ほら獄寺くん急いで!!」
ツナは獄寺の手を引いて走っていった。
骸とクロームはそんな二人を見送ったあと…
「クフフ…相変わらず元気ですね。では、僕たちも行きましょうか」
「…はい。骸様…」
そうして二人もまた吹く風に身を任せながら去っていく。
「…骸様」
「なんでしょう」
「お姉さまが…手に持ってたあの大きなバスケットは…なんでしょう」
「恐らくお弁当ですね。きっとボンゴレのために隼人くんが作ったんですねー、羨ましいです」
「…手作りのお弁当。嬉しいですか?」
「嬉しいですねー。僕も是非食べてみたいものです」
「………私で…」
「はい?」
「私でよければ…作りますが……」
「え?」
「お弁当……」
「………」
「………」
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