飛び出セ☆ツナ父
15ページ/全15ページ
「クフフ…ありがとうございますクローム。嬉しいですよ」
「骸様…では…」
「ええ。今度お願いしますね。…って、そういえばクローム。貴方は料理が出来ましたっけ?」
「はい。自慢ではないですが包丁を持ったこともありません」
「………今度一緒に作りましょうね。クローム」
「?はい分かりました。骸様」
少し疲れた表情の骸のあとを、クロームがいまいち理解し切れてない表情で着いていく。
そうしてそのまま二人は風に溶けるように消えていった。
所変わって並中。時変わってお昼。
いつものようにお昼ご飯タイムが今。始まろうとしていた。
「んんー…やっとお昼だお腹空いたー!」
「ツナくん、ずっとお腹鳴らしていたものね」
京子がくすくすと笑いながらお弁当を取り出している。
「朝起きてから食べてないんだ…遅刻ぎりぎりに目が覚めたからね。さて購買にでも…」
「あ、10代目!今日はオレがお昼を作ってまいりました!!」
「―――え?獄寺くんが?」
一瞬きょとんとなるツナ。そして。
「大丈夫!?指とか怪我してない!?」
大慌てで獄寺の所へと駆け寄り、手の平を見る…が、何処にも怪我は見当たらなかった。
「よ…よかったぁ…」
「10代目心配しすぎです!オレだってやる時はやるんですから!!」
えっへんと胸を張る獄寺。そしてバスケットをずいっとツナの前に突き出してくる。
「というわけで10代目!どうぞオレの弁当を召し上がって下さい!!」
「う、うん。…そうか…獄寺くんの手料理か…うわ、なんか緊張するなぁ…!」
恐る恐る。といった感じにバスケットの蓋を開けるツナ。そして。
ぶじょわぁぁああああ…
「うわっ」
パタン。
思わず蓋を締めてしまったツナ父。だってなんか煙が。黒い煙が。瘴気とかカオスとかそんな感じの煙が。
「10代目、どうされたんですか?」
どうされたもなにも。ツナが泣きそうな目で獄寺を見ている。
「え…いや、どうしたっていうか………ナンデモナイヨ?」
明らかに何かありそうだったがツナは愛する娘のために我慢するのだった。
意を決して、蓋を開ける。
やっぱりというかなんか黒い煙が上がるが、ツナは見えない振りをした。
だってお弁当から湯気とか…まぁそんな生優しい代物じゃないけど上がるわけがないから。見えない見えない。見えないったら見えない。
「さ、10代目、どうぞ!!」
気遣いの回ることに箸を渡してくれる獄寺。それをツナはいつものように受け取って。バスケットの中身の何かを掴む。
ていうかバスケットの中身がなんかなにやら。黒の塊しかない。黒い固形物の集まりしかない。炭だろうかこれは。
「卵焼きですっ!!」
そうか卵焼きか。ツナは普通に感心した。確かに形は卵焼きだ。あれは中々難しいのによく頑張ったなと思った。見た目はあれだけど。
「リボーンさんも褒めてくれたんですよっ」
「ああ…獄寺くんの料理中リボーンもいたんだね…リボーンはなんだって?」
「一言、「すげーな」って言って下さいました!!」
それは褒めてない。
そう突っ込みたかったがツナはぐっと堪えた。ていうか今は突っ込みとかそんな場合ではない。
だって今からこれを口の中に放り込まねばならないのだ。彼女の。獄寺の前で。
獄寺は先程からずっときらきらと目を輝かせて、自分の手料理を食べてくれる父親をずっと待っている。
これに応えなければ男ではない。父親ではない。彼女の隣にいる資格はない。
ツナは震える手を押さえ…覚悟を決めたかのようにかっと目を見開いた。
「南無阿弥陀仏!!」
本来ならいただきますだろうがツナの心理的状態においてはこれが一番正しかったようだ。
ツナは異様に硬い卵焼きを努力と根性で噛み砕き…飲み込む。ちなみに教室のみんなは固唾を呑んでツナの戦いを見守っていた。
「じ…10代目…。どうですか…?」
そんな中ただ一人分かってない獄寺はやや緊張したような面持ちでツナに感想を聞いた。ツナはこの数十分の間にすっかりと青褪めてしまった顔で。
「お…」
「お?」
「おいしかったよ…獄寺くん」
パタリ。
漢の顔でそう言い放ったあと…ツナはその場で倒れた。
「じ、10代目、10代目ーーー!?」
慌てて獄寺はツナに駆け寄るが、ツナは最早ぴくりとも動かない。
クラスメイトが気を利かせて予め呼んでおいた救急車がやってきて、ツナは担架で運ばれ…
数日間の生死を彷徨ったあとに目を覚ますのは…かなり先のことである。
++++++++++
ツナ、漢を見せる。
前
戻