飛び出セ☆ツナ父
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「…はぁ、ま。仕方ないからうちに泊めてあげるよ。獄寺くんの寝込みとか襲ったら警察とマフィアに突き出すからね」

「それしたら多分警察とマフィアが抗争を起こすだけのような気もしますが、分かりました。では少し自宅に連絡してきますね」


言って骸は携帯電話を取り出してボタンを打つ。


「…もしもしクロームですか?骸ですー…ええ。この豪雨の為今日は帰れないかと。ええ。明日には戻りますから。はい、クロームもお気を付けて。よい夢を…」

「…クローム?」

「僕の妹ですよ。そのうち紹介しますね。少しぼんやりしている子ですけど悪い子ではないですから」


どうやら骸にはクロームという妹がいるらしい。

…ってなんでオレは骸と交流を深めてるんだ…

…あ。なんか獄寺くんがうきうきしてる。


「なんかみんなで寝るって修学旅行みたいですよね!」


そうだねー…獄寺くんにぎやかなの好きだからねー………って。

みんなで?寝る?


「って駄目ーーー!!!」


「はぃ!?え?え?ごごご、ごめんなさい?」

「謝らないでもいいけど、みんなで寝るとか駄目!絶対駄目!獄寺くんのあの天使のような寝顔を…骸に見せるだなんて言語道断!!」

「おー…天使ですかー…それは是非とも見てみたいですねー」


「駄目だっつってんだろ!」


「う…」

「え?獄寺くん?」

「うう…う、ごめんなさい10代目…10代目がそこまで怒るほど駄目なんてオレ…考えもしなくて…」

「いや、いいんだよ獄寺くん?泣かないで…」

「ひっく…なんだか今日、オレ怒られてばかりですね…10代目に気を遣って頂いてるのに、オレ…オレ…」

「ご―――」

「…ごめんなさい!今日は…一人で寝ますね。おやすみなさい…!」

「あ、獄寺くん!」


止める間もなく…行ってしまった獄寺くん。

ああー…違うのにー…泣かせるつもりはなかったのにー…


「…行ってしまわれましたね…」

「うう…。仕方ないか…明日朝一に謝ろう…。ほら、骸行くよ…」

「はい?行くというと、どこへ?」

「オレの部屋…こうなったらオレの部屋で寝るしかないでしょ…この家客間ないし…」

「あっはっは。何言ってるんですかボンゴレ。貴方の部屋で寝るぐらいなら廊下で寝ますよ

「オレだってそうしたいけど…獄寺くんが夜中起きたときそんな骸見たら今多分被害妄想モードだからまた自分のせいだって思っちゃう…それは避けたいからね。だから骸の意思は無視」


骸を一人にして獄寺くんの部屋に行かれたら本末転倒だしね…

ああ…獄寺くん…落ち込んでるその心が早く治りますように。


「ひっく…ぐす、ぐす…」


獄寺は自室でひとり泣いていた。


「うっく…えぐ、うう…」


自分は父である綱吉のために生きているのに。綱吉のことだけを考えていればいいのに。

なのに…自分は綱吉に迷惑ばかりを掛けてしまって。怒らせて…

そんな自分が不甲斐なくて。情けなくて。獄寺は泣いていた。

そんな獄寺の下に、現れたのは小さな小さな影一つ。


「なに泣いてんだ?」

「リボーンさん…」


リボーンが近付いてくる。獄寺のすぐ近くまで。


「…ん?ツナがいないな。どうしたんだ?」

「あは、はは…オレ…10代目に迷惑を掛けてばかりでですね。反省中です」

「…そうか」


リボーンは小さな身体で獄寺の頭を撫でて。涙を拭ってやる。


「おめーはもっと我侭になってもいいんだぞ」

「リボーンさん…?」

「取り合えず今日は寝とけ。オレも一緒に寝てやるから寂しくもねーぞ」

「…ふふ。リボーンさんにはなんでもお見通しなんですね」

「当たり前だ」


獄寺はリボーンをぎゅっと抱き締めて。微笑んだまま眠りに着いた。

穏やかな寝息が聞こえてくる。リボーンは獄寺の目尻にまだ残っていた涙を拭って。


「…今まで全然我侭言わなかったんだから。今ぐらい我侭言ってもかまわねーんだぞ。獄寺」


そう呟かれた、獄寺が母と慕うヒットマンの言葉は…無論眠っている獄寺の耳には届かなかった。