飛び出セ☆ツナ父
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翌日。ツナが目を開けるとそこにはいつも通りの愛娘の寝顔ではなく。愛娘の彼氏の寝顔だった。


「………あー、朝っぱらから萎えるもん見た…なんかもう今日駄目だ。オレ駄目だ。もう疲れたよ獄寺くん…

「クフフ、朝一のテンションがそんなんでどうするんですかボンゴレ。隼人くんに謝るのでは?」

「そうだった…って骸…起きてたの」

「今起きました。おはようございます。ボンゴレ」

「あーうん。おは…」

「おはよーございます!10代目!!」

「おおうおはよう獄寺くん!元気だね!?」

「はい、あ…10代目、昨日は勝手に自室に戻り…すいませんでした…」

「いや、いいんだよ。オレの方こそ…ごめんね怒鳴って…」

「そんな、10代目は悪くないです!悪いのはオレで…」

「クフフ、そんな不毛な親子喧嘩はその辺にしておいたらどうです?」

「あ、骸おはよう。よく寝れたか?」

「ええまぁ。おはようございます、隼人くん」


どうでもいいが同室で寝ている父親と自分の彼氏を起こしに来る娘。なんだか凄い図だ。


「まだ少し雨も降ってますけど、自宅待機警報はもう解けたみたいです。学校にも行けるみたいですよ」


言われて二人が窓の外を見てみれば、確かに雨は昨日に比べて小降りになっていた。


「クフフ、すいませんねぇボンゴレ。朝ごはんをご馳走になりまして」

「いいよもう…。ここまで来て何も食べさせずに返すのもあれだしね。…はい、獄寺くん、あーん」

「はい。あーんです。10代目」


「貴方達何処でも相変わらずですか」


骸の突っ込みは誰にも届く事なく風に流れて溶けて消えていった。


「そんなことがあったんだ」

「そうなんだよ…もう大変だったんだから」

「あの、その…すいません…」

「いや、いいんだよ獄寺くん」


並中の昼休み。いつものようにお弁当タイムの中の雑談。

本日の話題は無論…獄寺の彼氏こと六道骸のことである。

まさか彼氏彼女認定の翌日にデート。しかもその後お泊りがあったなんて当たり前のことだが誰も予測出来ず驚きと動揺をみなに提供していた。


「六道さんもやりますね…」

「沢田も一緒だったって辺りがまたなんとも言えないけど」


あまりにもの親馬鹿具合にため息。気持ちは分かるがどうも行き過ぎている。


「…そうだ。ね、獄寺くん。今日何か用事あるかな」


骸の話も数十分で尽き、今度は京子が獄寺に話しかける。


「ん?何もないけど?」


獄寺がそう応えると京子は花が咲くように笑って。


「よかった。なら、放課後一緒にお買い物しない?」

「オレはいいけど…」


言葉を切って、伺うようにツナを覗き込む獄寺。ツナは笑って、


「ん?うんもちろんいいよ。丁度オレも色々買い足したいものが…」

「あ。ツナくんは来ないでね」


………。


有無を言わせない笑顔。そして威圧感。更に拒絶の言葉。

見事な三連今後にツナの頬を冷や汗が一筋垂れた。


「…いや、あの。女の子二人だけって…危ないし」


しかも二人ともかなりの美貌だ。あの風紀委員長がいる限り起りえないだろうが、もしも学校でミスコンなどしたらこの二人が一位と二位を争うことは目に見えている。それほどだ。


「女の子だけで楽しみたいの。だから、男の子のツナくんは邪魔


容赦なくきっぱりと言い放つ京子。どんな相手であろうとも我が道を行くツナだが、何故か今回京子の前だと強く出れない。


「………いや、えと…はい」


なんと、ツナ敗北。

勝者。京子。いや、京子様。

流石だった。


それから時間はあっという間に過ぎ、放課後。

ツナが心配そうに獄寺と京子を見ている。その視線に気付いた獄寺がツナの所へと近付いてきて…


「あの。10代目…」

「う、うん…」


獄寺はちょっと頬を紅潮させて。


「い…い、行ってきます…!」


どうやらなんだかんだで楽しみな様子の獄寺。ツナの視線の意味にも気付いてないようだ。


「…ウン、イッテラッシャイ。ゴクデラクン…」


ツナは思わず一筋の涙を流していた。


「獄寺くん、準備出来た?」

「あ、笹川…」


ぴょんと京子が獄寺の背に飛びついて来た。女の子同士の軽いじゃれあい。誰も咎めるものはいない。


「出来てるみたいだね。じゃあ行こうか。…じゃあねツナくん。また明日」

「では10代目、またあとで」