飛び出セ☆ツナ父
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可愛い可愛い女の子二人ににこやかに別れを告げられぽつんとひとり教室に残るツナ。
(…そうだよね…獄寺くんにも…たまにはオレから離れて遊んでみたいよね…)
三秒経過。
(女の子同士か…流石にそれはオレも強く言えないし、仕方ないのかな…)
八秒秒経過。
(まぁ夕方には帰ってくるだろうし、それまでに獄寺くんの好きなおかずでも作って待ってて…)
十五秒経過。
「あ。無理」
ツナはてってかと歩き出した。獄寺と京子が出て行った方向へと向かって。
…どうやら獄寺をひとりにするのが心配だとか嫌とかそれ以前に自分自身が獄寺から離れられないようだった。
しかし。
ツナくんは来ないでね。
教室を出たと同時に思い出されるあの言葉。威圧感。
何故か重い。一歩を踏み出せない。あの言葉だけにどれだけの力が込められているのだろうか。もう威力的には固有結界じゃないかとすら思う。
「ちょ…えー!なんで進めないのー!?獄寺くんー!!」
目に見えない巨大な壁に遮られ。獄寺の所へと行けないツナはただ叫ぶしかなかった…
そんな父親の心情も知らず。まさに親の心子知らずな獄寺くんは、今。
「それで、何を買うんだ?」
「下着。ちょっと新しいのが欲しくなって」
というわけで二人してランジェリーショップへと来ていた。
淡い色合いから縞々チェック。フリルからアニマルプリントなどなどなんでも揃っている。
確かにここには男性であるツナを連れてはこれない。
「獄寺くんも買っちゃう?」
京子が朗らかな笑みを浮かべながら聞いてくる。が。
「んー…オレは10代目が買ってきて下さったのがまだあるから…」
「待って」
流石の京子もストップサインを出した。今。彼女は。獄寺隼人はなんと言った?
10代目が買ってきたものがある?
「獄寺くんの…下着って。ツナくんが買ってくるんだ…。危ないものじゃないよね…?」
「危ない?とりあえず白ばっかりだけど」
じーさす。なんと言うことだ。どこの世界に年頃の娘の下着を買ってくる父親がいるというのだろうか。
「あはは…じゃあ折角の機会だし、可愛いのがあったら買ってみる?」
「でも…10代目が…」
「…ツナくんて、獄寺くんの下着を毎回チェックしてるの?」
もしもしてたら問答無用で警察に連絡しようと思っている京子。
「いや、そんなことはないけど」
ツナ、命拾い。
「じゃあいいと思うよ。それぐらいの自由は獄寺くんにもあるって」
「そう…かな。じゃあ少しだけ見てみよう…かな?」
「うん、じゃあ向こうのコーナーから…」
そうして女の子二人は店の奥へと消えていった。
そんな感じに獄寺が未知の世界へと羽ばたいている頃。我らがツナ父は。
「あああ…獄寺くん獄寺くん…心配だけど大丈夫かな…」
そんなこと延々ぶつぶつ呟きながら帰路に着いていた。
「ただいま…」
我が家に足を踏み入れる。いつもなら隣にいるはずの獄寺が同じくただいまと言ったあとお帰りも自分に言ってくれるのに今日はそれがない。
代わりに…
「遅かったな」
「え?」
投げられたぶっきらぼうな声。顔を上げるとそこには小さな影が。
「リボーンじゃん。ここに来るなんて珍しいね」
「獄寺は一緒じゃないのか?」
リボーン。ツナの言葉を聞く気ゼロ。
「…獄寺くんは京子ちゃんと遊びに行っちゃったよ」
「そうか。つまらんな。帰るか」
「お前本当にオレのことはどうでもいいんだね」
「お前なにを馬鹿なことを言ってるんだ?当たり前じゃないか」
「ひでー!!」
ああ、愛しの愛娘の代わりに扱い辛い鬼嫁だなんて。がっくりとツナは脱力する。
「おい。そんなところで項垂れてんじゃねーぞ」
「ん…?」
「客が来てんだ。茶の一杯でも寄こせ」
「結局居座るんかい!!」
ツナの突っ込みが玄関に広がった。
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