冷たい貴方
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「…で、それ言ったあとリボーンは何て言ったわけ?」

「迷惑だ。って一言言って切り捨てましたよ」


あっけらかんと言い放つ獄寺に綱吉は重いため息を吐いた。


「獄寺くん…それでもあいつの事が好きなわけ?」

「当然じゃないですか。何言ってるんですか10代目」


無駄に誇り気味に言ってくる獄寺に、綱吉は今一度ため息を吐かざるをえない。

あんな奴のどこがいいというのか。

しかしそんなことを無防備にうっかり聞いてしまった日にはかなり偏見の入ったリボーンの魅力トーク…という名の獄寺の惚気が始まるのは目に見えているので聞かないが。


「はぁ…こんな可愛くていい子に好かれて。リボーンも一体何が不満だって言うというのか」

「不満ていうか、オレのこと大嫌いらしいですからね。リボーンさんは」

「そこまで言われたの!?」


驚いて聞き返す綱吉にはいと軽く返す獄寺。にこにこと微笑んでいる。


「…今度リボーンに会ったらオレ、何て言うか分からないかも…」

「あはは。でもリボーンさん相手なら軽くいなされておしまいですよ」


獄寺に笑いながら言われてしまい黙り込む綱吉。

けれど確かに、あのリボーンには綱吉は未だ勝てないままだ。どう足掻いても最後には負けてしまうのだ。


「うー…腹が立つー。色々と納得がいかないー」

「10代目が気に病む必要はないですよ。これはオレとリボーンさんとの問題ですから」


獄寺にそう言われてもそれでも綱吉は引き下がる様子を見せない。

というか、片想いなのだが綱吉だって獄寺のことが好きだったりするのだ。想いが芽生えてもう10年にもなる。

…なんだか生涯言い出せなさそうな雰囲気なのだが。


「そういえば問題のリボーンは今どこにいるんだっけ?」

「リボーンさんなら東の抗争地区に行ってもらってますよ。こちら側が苦戦しているそうなので助っ人としてだそうです」

「ああ…そうか。別件の任務の帰り道だからって珍しく引き受けてくれたんだった」

「…最近、リボーンさんをアジト内で見かけませんね…」

「そうだね。任務任務であまりボンゴレにいない。…あいつあんなに真面目だったっけ…?」


リボーンはここ数ヶ月自らが志願した任務に赴き世界各国へと飛び回っている。

どの任務もかなり危険度の高いものなのだが定期的に入ってくる報告によるとどれも問題なく進んでいるようで。


「この間、報告受けているときリボーンに仕事をサボってないだろうなとか言われちゃったよ」

「あ…羨ましいです。オレなんて電話掛けても切られますからね」

「そこまで徹底されてるの!?」


などと二人が談笑をしていると、不意に開け放たれた背後の扉。


「戻ったぞ」


そこから現れたのは、まさに今話題の中心となっていたリボーンその人だった。

風に吹かれて届くは鉄錆の臭い。そして彼の足元から滴っているのは…


「…リボーンさん?怪我を…!?」

「少し遊んでやっただけだ」


事も無げにそう言って、リボーンは綱吉に報告書であろう書類の束を投げ渡す。そしてそれが終わると挨拶もなしに去ろうとして。


「ちょ…っとリボーン!」

「少し休む。明日になったらまた出るからな」


ボスである綱吉の制止も聞かない。赤い足跡を残してリボーンは室内を後にする。


「待って下さい、リボーンさん!」


獄寺は慌ててそんなリボーンの後を追って行った。