罪と罰
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あなたがオレの前に現れて。

オレの首を絞め上げた。


抵抗なんてする間もない。

あなたの指が、オレの首元を圧迫する。

視界が霞み、目の前が白くなる。

言葉を発することも当然出来やしない。


「―――――」


それでも、オレは言葉を紡ごうとする。

あなたの名前を、呟こうとする。

当然、声は出ない。

気道を圧迫された状態では、声どころか息すら出てこない。

白む世界で、あなたの顔を見ようとする。

ただでさえ視界の悪い中、あなたは帽子を目深く被っていて。

あなたの顔は、伺い知れない。

意識が途切れ途切れになる。世界が終わる。

身体に力が入らず、身に宿る感触は締め付けられる首元だけ。

そんなオレを、どこか遠くで見つめている自分がいた。

その自分が、嗤う。

その自分が、吐き捨てるように呟く。



     楽しそうだな。



オレの頭の中に、その声が反響する。

オレはそいつに答える。



     ああ、そうだな。



全く、笑ってしまう。

涙が出るほど。

だって、どうせ。


これ、夢なんだろ?


そう思うと同時、オレの首の骨が折れる音がした。

世界は白となり、オレの意識は弾け、浮上する。