運命の人
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「皮肉ですよね」

「え?何が?」

「『出会いは星の数ほどある』…昨日見たドラマで、振られた親友を慰めるシーンの台詞です」

「…よく聞く台詞だね。どこが皮肉だって思うの?」

「だって」

「うん」

「確かに星は、夜空を見上げれば数えきれないほどありますが」

「うん」

「…でもどう足掻いたって星に手は届かない」

「…ロケットを使えば行けるかもよ?」

「仮にロケットで星まで行ったとしても、その星は地上で見たのと違って輝いてません。輝いて見えたのは、月の反射です」

「じゃあ月に行けばいい。星に行けたのなら、月にもきっと行ける」

「月に行っても、その月も太陽の光で輝いて見えるだけです。実際は輝いていないし、兎もいません」

「じゃあ太陽に行けばいいって…流石に無理かな?」

「そうですね。現在の科学力では、太陽に行く前に燃え尽きてしまいます」

「…難しいね」

「そうですね。それ以前に、一般人の経済力ではロケットなんて買えないでしょうから。やっぱり空を見上げるだけです」

「そして届かない光に想いを焦がし、手を伸ばす…か」

「はい。だからやっぱり皮肉だなって。そう思ったんです」

「ふーん。じゃあさ」

「?はい」

「今、オレの目の前にいる獄寺くんってさ」

「はい」


「―――オレの前に落ちてきた、星なんだね」


++++++++++

(あ。獄寺くんが言葉に詰まった)