忘物語
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どれだけそこにいるのだろう。

リボーンは、何をするわけでもなく、そこに立っていた。

その身体は半分透けていて、誰の目にも映らない。

それもそのはずで、今のリボーンに肉体はない。

リボーンの肉体は、リボーンの足の下。

土の中に埋まっている。

リボーンの今いるその場所は、自身の墓。


リボーンは、死んでしまった。


任務の途中、敵の凶弾に倒れて。

あっけない最後だった。あまりにも。

しかしそれを嘆く気持ちも、悔いる気持ちも、ましてや怒りの感情も出ては来ない。

特に何も思わない。…というか、生きていた頃の記憶ももうあまり思い出せない。



―――もしかしたら、

これが、死というものなのかも知れない。



曖昧な記憶、曖昧な世界。

誰にも見えぬ身体、誰とも分からぬ世界。

リボーンのいるその場所に、色んな、沢山の人間が訪れる。

それをぼんやりと眺めながら、しかしリボーンの心中に感情は芽生えない。


何も思わない。


訪る人間の顔も、何故だかぼやけて見えて、誰が誰だか。

声も聞こえるはずなのに、リボーンの耳に入るは風の音ぐらいのものだ。

…以前なら、たとえ耳がいかれたとしても、口の動きだけで会話を理解することが出来たはずなのに。


今はもう、それも出来ない。


いるのに見えず、いるのに分からず、ただただここにあるだけの存在。

…そしてそのまま、存在が希薄になっていくのを感じてきた頃―――


「リボーンさん」


声が、聞こえて。


「お久し振りです」


姿が、見えた。

誰の?


獄寺、隼人の。