止まない雨
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そう、今は仕事中だった。内容は最近力をつけてきた敵対マフィアのアジト潰し。
といっても、オレにとってはいつもやることに変わりはない。
お前を傷付けさせないように、そのために行動するだけだ。
殺しの仕事は特に傷付きやすいお前。
もう何人もの人間の血でその手を染めてきただろうに、未だ殺しの後は夜も眠れないお前。
ならば、オレはせめてお前が血で染まらないようにと立ち振るうだけだ。
だけど今回の仕事は。
どうやら罠だったようで。
なんともオレにとって、戦いにくい、嫌な戦法を取ってきた。
すなわち。
―――獄寺を集中攻撃―――
獄寺だって、至近距離の敵も倒せるようにと、接近戦用武器の使い方も学んでいる。
だけどやはり長年愛用しているダイナマイトよりは負けてしまうわけで。
それ以前に、オレとコンビを組むようになってから、獄寺はナイフを初めとする至近距離武器を使っていない。
オレが、使わせなかった。
獄寺は切った肉の感触だけで、一ヶ月は肉料理を食えなくなるほどだから。
オレは獄寺を傷付けたくない。
オレは切った。敵を。何人も。
獄寺に近い奴から順に。
一人、また一人と切っていく。
遠くで獄寺の声が聞こえた気がした。やまもと、と。
オレはそれに振り返ることもせずに、ただ目の前に敵を切った。最後の敵を。
と、それと同時に背中を押された。どん、と。
後ろにいるのは獄寺だ。獄寺しかいない。だからオレの背を押したのも必然的に獄寺ということになる。
オレは振り返る。目の前には。
獄寺が。
その身を、赤く染めて。
そのナイフを、敵の喉下に突き刺していた。
―――――雨が降っていた。
―――ざぁざぁと。
「ごく…でら?」
震えている自分の声。
その声が届いたのかどうか知らないが、とにかく、獄寺は薄目を開けてくれた。
「んだよ……」
開けられた口から漏れた声は、オレの声よりも小さくて、弱々しくて……
獄寺は見ただけで分かるほどの、致命傷を負っていて。
「獄寺!獄寺ぁ!!」
オレはただ、叫ぶことしか出来なくて。
「うるせ…」
台詞の途中で、獄寺がむせる。その拍子に、口から血液が溢れた。
それは、命の源。
それは、命の灯。
それが失われていく。
………オレのせいで。
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