最愛の人を蘇らせる為の唯一の方法
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殺し屋は城の外に出ていた。

仕事の仕上げをするために。

依頼内容は人間は殺せ。兵器は壊せ。そしてもう一つあった。


獄寺の城を潰せ。


徹底的に破壊して、破壊し尽くして、二度とこんなことが起きぬように、起こらぬようにして欲しいと。

城を破壊した程度でこんなこととやらが二度と起こらないとは思えないが、受けた仕事はきっちりこなすのが彼だ。

爆薬を仕掛け、あとは仕掛けを作動するのみ。城の中であらかじめ支柱を傷めておいたので、最低限の爆薬で済む。

確認作業をしていると、城の入り口から歩み寄る影。

殺し屋はそちらを見遣る。人間も兵器も、全て動かぬようしたはずだが。


…ああ、いや。


殺し屋は思い出す。一人、だか、一つ、だか。逃したものがあることを。

影はゆっくりと歩いてくる。山を降りていくのかと思いきや、影は、彼は殺し屋の直ぐ傍まで来て、停止した。

彼は殺し屋を見上げる。相変わらず感情のない目。しかし焦点は合っており、濁っていた目も多少ましになっていた。


「…なんだ?」

「………」


彼は答えない。

ただ見上げるのみ。


「オレを殺しにでも来たか?」

「………」


彼は答えない。

何の反応も返さない。


「行く場所は決めたか?」

「はい」


彼が言葉を返した。反応を返した。

それは殺し屋にとって予想だったのか、少し驚いた顔をした。

彼は真っ直ぐに、ひたむきに、殺し屋を見ている。


「オレの行きたい場所は、あなたのところです」


真っ直ぐな視線。真っ直ぐな言葉。

それを避けることなく受け止めながら、殺し屋は、まずは仕事を遂行することにした。


「…ひとまず、ここを爆破する。離れるからお前も来い。ここにいたら死ぬぞ」

「はい」


彼は笑って殺し屋についていく。

やがて誰もいなくなったその城は爆発し、獄寺家の歴史は幕を閉じた。