最愛の人を蘇らせる為の唯一の方法
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それから、更に数ヶ月が過ぎた。

獄寺は幸せの絶頂にいた。

あれからリボーンはセーフハウスに帰る回数が増え、よく獄寺と食事を取っている。

それ以外の時間では武器の手入れをしたり、本を読んだり、昼寝をしたり。

今まで仕事一筋だった……というか、仕事しか知らなかったリボーンは、初めて世界の別の見方も知った。


娯楽の楽しみ方を、知った。


と言っても、やはり基本的には毎日仕事をしているし、その量も大層なものだが。

そしてその日も、リボーンは外に出ていた。

獄寺は庭に広がる落ち葉を箒で掃いていた。

楽しそうに、幸せそうに、鼻歌交じりに。


その様子はとても―――人間らしい。


ああ、今日の夕食は何にしよう。最近は毎日のように帰ってきてくれるリボーンさん。その理由がオレの料理にあるのなら。これ以上喜ばしいことは何もない。

家にある食材から出来る料理を考えている。―――と。


熱量感知。


誰かの接近に、獄寺の動きはぴたりと止まる。

ああ、また誰かが殺されに来た。

すっかり手に馴染んだ拳銃を取り出すが、しかし構えない。

悪意・敵意・殺気が無い。見えない。

今までの彼らは、すべからくこちらを殺そうとしてきた。悪意を、敵意を、殺気を持っていた。

それが、感じられない。

リボーンが人を殺すのは、ある条件に当てはまった者だけだ。


一つ。依頼された者。

一つ。自分に攻撃してきた者。


後者の条件に限って言えば、リボーンは完全にイニシアチブを相手に譲っている。後手に回る。いや、まあ獄寺の場合出会い頭に引き金引いてきたけど、まあそんな日もあるさ。

ともあれ、最近は獄寺もそれに倣っている。故に、攻撃されず、殺気も持ってない相手を撃つことはしない。

獄寺は黙って相手が来るのを待つことにした。距離二時の方角より約2000。

暫く待つと、相手は現れた。

相手は獄寺よりやや年上に見える幼い少女。

顔には微笑。背中までの長い髪。上等そうな服を着こなし、真っ直ぐに獄寺の元まで歩いてくる。


「止まれ」


セーフハウスの敷地内に入る直前で、獄寺は彼女に言う。彼女はその言葉にぴたりと止まる。

向き合う二人。髪の色、目の色、顔立ち。どこかふたりは似ていた。