夢色恋物語
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「―――ハヤト、こらハヤト。…起きろ」
「………ん、んぅ…」
優しい手に揺すられて、意識がまどろみの中から浮かび上がってくる。
窓の外を見ていたはずが…いつしか眠っていたらしい。
「よく寝てたな」
降って来た声の方を見てみると…その人は頭を撫でてくれる。
「もうすぐ駅に着くぞ。ほら、支度しろ」
「はい」
返事をして、荷物を片付け始めた。
…と言っても、元からさほど荷は少ない。整理もすぐに終わってしまった。
それでも荷物をまとめて、ふと窓の外を見てみた。…看板が目に入る。
―――終点、並盛町まであと二駅―――
「…すまないな」
「え?」
振り向くと、そこには少し苦悩に表情を歪めた…
「…そんなこと言わないで下さい」
「ハヤト?」
「ハヤトは、大丈夫です。だって…ハヤトにはパパがいるんですから!」
にっこりと微笑んで、ハヤトはパパのお膝に座り込みました。そしてパパを見上げます。
「お引越しなのも、パパのお仕事の為なら仕方ないのです。パパが謝ることはないのですよ!!」
「ハヤト…」
パパはハヤトをぎゅって抱き締めてくれました。ハヤトもパパをぎゅ―って抱き締め返します。
そうしているうちに汽車は駅に着いて、ハヤトとパパは新しい町…並盛町の土を踏んだのでした。
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