夢色恋物語
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「お隣さんに、新しい方がやってくるそうですよ」


母さんがオレを抱きかかえながら静かに言ってくる。

そういえば隣の空き家に引っ越し業者のトラックが数台着ていた。それだろう。


「どんな方なんでしょうね」

「さぁな」


素っ気無いオレの言い方に母さんが苦笑している。そしてオレの頭を撫でる。


「もう…あなたは来年から幼稚園に行くんですよ?もっと他人に興味を持たないと周りから浮いちゃいますよー?」


脅しを含んでいるような、からかってくるような声にも別にオレは動じない。そんなオレに母さんは更に苦笑しているが。


「…さ、そろそろご飯の支度をしましょうか。何が食べたいですか?」

「塩と砂糖を入れ間違わないならなんでもいい」

「…あ、あれは少し疲れていただけで…二度とあんなへまは…」

「そこまで疲れているなら、たまには休んでもいいんだぞ?」

「え…?」

「母さんがいつも夜遅くまで働いているのは知ってる。今日はたまの休みなんだ。ゆっくり身体を休めても罰は当たらない」


母さんは暫しぽかんとした顔をしていたが…やがて笑って。


「ふふ…ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。あなたを見ていたら疲れなんて吹き飛びますから」


母さんはオレにありがとうございますと礼を言って、キッチンへと向かった。

そしてその日の昼過ぎに、隣の家に新しい人がやってきた。