夢から覚めた日
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「……に、言ってんだよ」


オレは喉から声を絞り出す。頑張って、どうにか。


「ありえないとか、逢えないとか、そんな訳ないじゃないか。だって、夢、なんでしょ…?」


オレの声は掠れていて、震えていて。でも止めることなんて出来なくて。


「今日からも、夢と同じ事は起きるから。大丈夫だから。平気…だから」


それはまるで、自分自身に言い聞かせているように。

だってそうでもしないと。

認めてしまいそうだから。

本当に、今日からの日常に、獄寺くんが消えてしまうことを。

気が付けば、獄寺くんの後ろの光は淡さも儚さも脱ぎ捨てていて。

熱くて、眩しい光で獄寺くんを包み込もうとしていて。

オレはその光から獄寺くんを遠ざけようとするんだけど、身体は動いてくれなくて。声ももう出なくて。

獄寺くんは光を背に受けながら、オレを真っ直ぐに見て――笑った。


「10代目」


――それは今まで見てきたどんな笑顔よりも綺麗で。儚くて。


「さよなら」


オレは言うことを聞かない身体を叱咤して、何とか腕だけを獄寺くんの方へと動かして―――叫んだ。