夢から覚めた日
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「―――獄寺くん!!」


掴んだのは、虚空。

オレは見慣れた天井に向けて、腕を差し出していた。


「ゆ……め…?」


呟いて、悟る。

悪い夢を見ていたと。

ゆっくりと、時間を掛けて起き上がる。全身に汗を掻いていて気持ち悪かった。

暫くそうして放心していると。


「どうした、ツナ」


リボーンに声を掛けられた。いつものスタイルで、いつもの口調で。

だからオレも、いつもの口調で答える。


「うん…夢をね、見てた……」

「夢?」

「そう……夢」


そうだ、そうとも。夢だ。現実にある訳ない、馬鹿馬鹿しい―――夢。


「笑っちゃうよね。夢の中に獄寺くんが出てきて、悲しい夢を見ましたって言って」

「………」

「どんな夢って聞いたら、いつもの日常の夢で、それのどこが悲しいのって聞いたら、もうありえないことだから、悲しいって…」

「…ツナ」

「――でも、夢だもんね。現実にそんな、……ある訳ないよね」

「そう思ってんならツナ。何でお前――」


泣いてんだ?


「―――っ!!」


言われて頬に手をやれば、確かに熱い液体が流れ出ていた。


「…違う、そんな、ある訳ない。………そうだ。獄寺くんに電話」

「獄寺は昨日からイタリアだ。前に話してただろ。忘れたか」


……忘れてた…


それでもと思い、電話を掛けるも電波の届かないところにいるか、電源を切っているとのメッセージ。


「獄寺くん……」


連絡の手段を絶たれ、オレに出来ることといえばなんとも無力なことに祈ることだけ。

それでも何もしないよりはましだと目を閉じ手を組んで、彼の無事を祈る。

目蓋の裏に映し出されたのは、最後に見た、彼の美しくも儚い笑顔。