憂鬱
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知らない。

死なんて知らない。

だって誰も教えてくれなかったから。


怖くない。

死なんて怖くない。

だって、誰も怖がらなかったから。


少なくとも、オレの知ってる世界ではそうだった。

みんな死に向かっていくようにすら見えた。


むしろ、死を促された。


敵を殺す。そうするようにと教育されてきた。

敵を殺せば周りは褒めてくれた。

それが嬉しかったから、オレは教えられたようにそうしてきた。

そのせいでオレの身がどうなろうとも。関係なかった。

周りの人間もそうだったから。

ああ、そういえばただ一人だけ。オレを叱った奴がいた。


Dr.シャマル。

…オレの、専門医。


まぁ、奴は医者だから。怪我を治す手間が面倒だったのだろう。


死なんて知らない。

死なんて怖くない。


オレは獄寺の人間だから。

そんなもの知らなくてもいい。

そんなもの恐れてはいけない。

ただ、敵に突っ込んで、一人でも多く殺して――


死ねばいいのだから。


それがオレに与えられた役割。

それがオレに求められた仕事。


それが、オレが生かされている理由。


オレの代わりなんていくらでもいるのだから。

今日もまた敵を殺す。

手間が掛かった。予定時間を過ぎてしまった。怒られるだろうか。憂鬱だ。

怪我をした。血が流れて、止まらなくて。痛くて。

…ああ、またDr.シャマルに怒られるのだろうか。

憂鬱だ。


++++++++++

会いたくないけど、行かなくちゃ。