雲雀恭弥の憂鬱
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まぁそんなことがあっても雲雀の生活にあまり変化はなかったが。
いつものように朝早く起きて朝食とお弁当の準備をしてみんなを送り迎えして。
お買い物に出て。
家の掃除をして。
ボンゴレに顔出して。
子供たちを迎えに行って。
晩ご飯を作って。
ハヤトを迎えに行って。
そして最後に布団の中で眠りに付く。
雲雀の中でそれはもう習慣となってしまったのか、特別その生活が変わるわけではなかった。
ただ…
「雲雀ー!!」
「ん?おはよう。ってわー!?」
朝っぱらから次女ちゃんが雲雀におはようのキスをしに雲雀を押し倒してたりしたが。
流石は新婚。そして学生。若さゆえの過ちをするには好条件が揃っていた。
おはようのキスのみならず、次女ちゃんはいってきます、ただいま、そしておやすみのキスまでしないと気が済まないみたいだった。
全てはあの両親の影響だった。
なんて言ったってあの二人はそういうことを素でやってのけているのだ。
そんな両親を見て育った子供たちはやっぱりそういうのが正しい夫婦のあり方だと信じて疑っていない。
次女ちゃんもその例に漏れておらず…いや、最も影響が深いのが次女ちゃんで。そしてその被害を被ったのが雲雀だった。
まさかこんなことになるだなんて夢にも思ってなかった雲雀はなんかもう日々がいっぱいいっぱいみたいだった。
嗚呼これが普通の一般家庭とちょっと普通という枠から外れた一般家庭の常識の差。けれどそんなこと次女ちゃんには分からないみたいで。
「オレ…雲雀に嫌われてるのかな…」
ふと、そんなことを口から零してしまった。
「なんだ急に。どうした?」
「そうですよ!あなたを雲雀さんが嫌っているだなんてそんなことがあるわけないじゃないですか!!」
「でも…雲雀の奴オレからのキスを嫌がってて…」
「そんな、雲雀さんはただ照れているだけですよ!!」
「まだ結婚して日も浅いしな。あいつも戸惑っているだけだろう」
「うん…」
「元気出して下さいね?と言うわけではいリボーンさん。あーん」
「ん」
もくもくとハヤトの手から間食を取るリボーン。
なんでもハヤトがそういうのをテレビで見たらしくやってみたいと言ったらしいのだ。
言うハヤトもハヤトだが、それを承諾するリボーンもまたリボーンだった。
「………」
「なんだ。どうしたハヤト」
「あの…その、ハヤトも…」
どうやらハヤトはリボーンの手でおやつを食べてみたい模様。
リボーンは読んでいた新聞を置いて、ハヤトの持っていたスプーンで今日のおやつ(雲雀作)をすくって…
「ほら」
「えへへ、あーんっ」
差し出されるがままにぱくりと食べるハヤト。幸せそうだった。
次女ちゃんはなんだかもう忘れ去られているようだったが、次女ちゃんは特に気にせず。
「…いいなぁ…オレもあんな風に雲雀と愛し合いたい…」
などとますます一般家庭との溝を開かせていた。
それからも次女ちゃんは雲雀に熱烈な愛をぶつけていたが雲雀は基本逃げていた。
ああ、やっぱり雲雀は自分のことなど嫌いなのだろうか。
こんな男みたいな口調の女など雲雀の好みではないのだろうか。やっぱり大和撫子とか淑女な雰囲気がいいのだろうか。
あるいはママか。
次女ちゃんの脳裏にはぅはぅ言いながらリボーンに甘えるハヤトが思い浮かぶ。
………ちょっと無理そうだった。
しかし、ならばどうすればいいのだろうか。
それとも…もうどうすることも出来ないのだろうか…
次女ちゃんの胸の中に切なさが込み上げてくる。
「…どうしたの?」
「社長…」
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