雲雀恭弥の憂鬱
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「ひばりー」
とてとてとやってくる小さな影。
「ん?なに?」
雲雀はやさしく答える。家には雲雀と次女ちゃんだけの二人っきり。
「ひばりは"ひとりみ"なのか?」
「………いきなり凄いこと聞いてくるよねキミは」
一体どこで覚えてきたのだろう。テレビだろうか。
「しゃちょーが前そう言ってた」
「………」
咬み殺す。雲雀はそう決意した。
「で、で!それでひばりは"ひとりみ"なのかー?」
「……まぁそうだけど。それがなに?」
どこか疲れたように言ってくる雲雀に、けれど次女ちゃんはとても嬉しそうに。
「そっか!ひばりは"ひとりみ"なのか!!じゃあよろこべひばり!!」
「?」
「オレがひばりとけっこんしてやる!!」
「ぶ!!」
思わず雲雀は吹き出してしまいました。だって結婚て。この子理解しているのだろうか。
「あのな。ねーねーはパパとこんやくするっていってて、にーにーはママとせきいれるんだって」
末恐ろしい子供たちであった。
「だからオレはひばりとけっこんするの!なぁ、いいだろ!?」
「………ああ、なるほど。姉兄の真似事ね…びっくりした」
「ひばりとけっこんすればまいにちごちそうだよな!オレってあたまいいー!」
次女ちゃん、早速尻に敷く気満々のようだった。
「わお。そこまで思われて光栄だけど…女の子は16歳にならないと結婚出来ないんだよ?」
「えぇ!?そうなのか!?」
「そう。法律で決まっているの」
「んー…」
そうなんだ…と次女ちゃんは暫く唸って。でもやがて顔を上げて。
「じゃあ、オレが16になったらけっこんな!やくそくだからなひばり!!」
「うん。分かった」
そうして二人は小指を絡めて小さな小さな約束をしたのだった。
それは遥か昔。おおよそ10年ほどのことだった。
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