雲雀恭弥の憂鬱
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「…思い出したか?」

「いや…思い出したけど、確かに約束したけど…あれは…」

「よし!じゃあ役所行って婚約届け出しに行くぞー!」

「もう!?え、待って。僕これからハヤトの仕事に付き合って海外に…」

「海外!?じゃあそれを新婚旅行にしよう!!」

「しんこ…ってえ、え、え、ぇぇぇええええええええ!?」


次女ちゃん、誰に似たのか行動力が半端ありませんでした。

そしてその数十分後には次女ちゃんは見事に荷造りを果たし、雲雀にさぁ行こう!と言いのけたという。

まさか新婚旅行が親同伴になるなんて。世界初ではなかろうか。

いやいやそんなことよりも。雲雀はかなり悩み困っていた。

まさか自分が結婚だなんて。しかもその相手があのハヤトの子供だなんて。

かなり不意打ちだった。だってまさか10年ほど昔の約束事を持ち出してくるなんて普通誰も思わない。


しかし…約束は約束。


昔とはいえ確かに約束したし、雲雀も彼女のことは嫌いではない。

まぁだからと言っていきなり結婚は早過ぎると思うが。とはいえ友達からというほどの浅い付き合いでもないのだが。

このことは緊急家族会議にかけられたのだが次女ちゃんの父親であるリボーンは、


「…ふー…そうか。まぁ迷惑を掛けるとは思うが、よろしく頼む」


と、かなり意外なことに肯定的な意見を出してくれた。

ちなみにハヤトは、


「今日はお赤飯ですね!!雲雀さん、よろしくお願いします!!」


晩ご飯のリクエストを出していた。

ていうか作るのはやっぱり雲雀なのか。自分の結婚で赤飯を自分で炊くのか。


「………いや、なんかそんな…そんなあっさりとしていいわけ?」

「…は!そ、そうですよね!ハヤトってばついうっかり…雲雀さんのご両親にもご挨拶をしないとですよね!!」

「いやだからそうじゃなくて…あと僕の両親はもうどちらも亡くなってるから挨拶の必要はないよ」

「はぅー!?」


亡くなっている。その言葉に早とはがーんとショックを受けていた。

…全然知らなかった。

雲雀ともう何年も何十年も共に暮らしているといるのに、自分は雲雀のことなど何も知らないのだと。


「…いや、そう落ち込まないでハヤト…別に僕はどうとも思ってないから…」

「でも…!そうだ、この子と結婚すると言うことは雲雀さんはハヤトたちと本当の家族になるって事ですよね!ハヤトの事をこれからママって呼んで下さい!!…ほらリボーンさんも!!」

「あ?あー…パパだ。どんと来い息子よ」


リボーン、ハヤトに促されてかなり棒読みに、どうでもよさ気に言ってきた。


「ほら、あなたたちも!!」

「雲雀!これから私のことを姉さんって呼んでね!!」

「…雲雀がオレの弟になるのか…」


ハヤトの勢いに押され思わず叫んで言う長女ちゃんと冷静に状況を分析する長男くん。

確かに雲雀が次女ちゃんと結婚すればハヤトとリボーンは雲雀の義理の両親になり、長女ちゃんと長男くんにとっても妹の旦那なのだから雲雀は義理の弟ということになる。

たとえ雲雀がこの家の中で最年長だったとしてもだ。

なんだか恐ろしい現象が起こっていた。


「これからはハヤトたちにたくさん甘えて下さいね!雲雀さん!!」


満面のアイドルの笑顔。


これから法律上この人が母親になるというのに、雲雀の中ではハヤトは一番手のかかる子供と言う認識に最早なっていた。

というか。


「いや…あの、その。………いいの?僕が彼女と結婚しても…反対意見とか…ないの?」

「なんだ。お前はいやなのか?」

「…いやというか…むしろ彼女のことは好きだけど…」

「そうか。ならば何の問題もないな」

「………」


雲雀、いつしかむしろ結婚をしなくてはいけない流れに突入していた。

どうやらこの家庭には年の差とか今までの関係とかそういう理屈は一切通用しないようだった。

そんな周りの強い押しというか流れのままに雲雀は気付いた時には婚姻届に判を押していて。

そうして他人の関係から始まったハヤトと雲雀はピー年の月日を介して無事に義理の親子となったのだった。


そんな雲雀の教訓はその日から「人生、何があるのか分からない」になったらしい。