絶望の種 0/ Gokudera Side
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そう。そうなんだ。
オレはもう。どうしてもあの人のお役に立てない。
あの人に命を救って頂いたときから。
あの人の為だけにその生を使おうと決めていたのに。
なのに。それがもう出来ない。
それを知ってるはずなのに。
「なのに みんなころしてくれないんですよ」
こんなオレを生かして。一体何がしたいんだろうか。
ああ、おかしい。おかしい。おかしい。笑ってしまう。
そんな、オレだけの世界の中に。
「なら」
小さな。けれど確かな声一つ。
「オレが殺してやるよ」
―――。
あれ?…リボーンさん…?本物…?
うわ、オレてっきり幻だと思っていたけど…ご本人?
「あれ…リボーンさん?いたんですか?」
「お前もいい感じにいかれてきてるな。最初からいただろうが」
呆れたように言われてしまう。まぁ呆れられて当然なんだが。
「あはは…ごめんなさい。まさか本物だなんて思わなくて…」
こんな時間だし。幻覚の類なら時々見るし。
何より…本当にこの人が来るなんて思わなかったから。
この人はオレを嫌ってるって思ってたから。
でも。ここにいるってことは本当に…そうして下さるのだろう。
ああ。なんだ。なんだ。
そうか。オレ最初から間違ってたんだ。
本当にオレが死にたいのなら、オレを家族だという医者に頼んでも無駄だった。
本当にオレが死にたいのなら、オレを仲間だというボスに頼んでも駄目だった。
本当にオレが死にたいのなら…
職業・殺し屋でオレのことなんてなんとも思ってない小さなヒットマンに頼むべきだったんだ。
「オレを殺して下さるんですよね」
「ああ」
ほら。だってこんなに簡単に了承を得ることが出来た。
「嬉しいです」
本当に。
「――何か言い残すことはあるか?」
この人がそんな慈悲を見せて下さるなんて。本当に本物なのだろうか。なんて失礼なことを考えてしまう。
けれどまぁ、提案して下さっているのだから考えるだけ考えてみよう。
といっても、何か残したいといえば当然あの方のことだけに決まっているのだけれど。
10代目。
オレが死んだら、どう思うのだろうか。
黙っていたことを怒るだろうか。それとも…悲しんで頂けるのだろうか。
それは部下冥利に尽きるというものだけど、でも………それはオレの心が許さない。
「では…言い残すというよりもお願いなんですけど…良いですか?」
「聴こう」
「はい」
オレの、願いは…
「10代目には、"獄寺隼人が死んだ"こと以外の情報を決して与えないで頂けますか?」
出来ればオレが死んだことすらも黙ってていて欲しいけど。それは無理だろうから。
ならばせめて。情報は必要最低限に。
「それで良いのか?」
「はい」
これで良いんです。
「ツナは苦しむぞ」
「でも悲しみは軽減されます」
そう信じてます。
いつしか室内は暗く。暗く。
全てが逃げていくような錯覚の中。それでもあの人との距離は変わらず。
二つの言葉を交わしたあと。少しの間があって。あの人が口を開いたけれど。
それを理解する前に。オレの意識はぷっつりと途切れた。
だからオレの話は。ここでおしまい。
++++++++++
さようなら。オレは先に行ってますね。
…悔いの残る人生でした。
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